空手のススメ、徳島の田舎道場から

written by 逢坂祐一郎(新極真会 第8回世界大会 2位)

100 人の一人のスタートラインのススメ、それぞれに合ったスタートライン

 約 30 年前の昔、私が我々の空手を習い始めた頃には「黒帯になるのは 100 人の入門者のうち一人」などと言われていました。
 我々の空手は約 30 年前から海外、または日本のほとんどの都道府県に支部を展開する世界組織、全国組織ですが、当時、おそらく全国すべての道場の 1 年のうちの総入門者数と 1 年のうちの初段昇段者総数の比率は、実際 100 人に一人ぐらいだったと思います。

 我々の空手が漫画、映画にもなり一大ムーブとなった 1970 年代、1980 年代などは、私はまだ我々の空手を始めておらず実感として知りませんが、我々の空手の入門者は今では信じられないほど多く、往年の東京池袋の総本部道場では 1 日の入門者数が 100 名に至った頃もあったそうで、その当時の黒帯になる比率はもっと少なかったかもしれません。

 我々の空手が一大ムーブになった一因は〝100 人のうちに一人〟といったフレーズに代表される、人を高揚させる武道空手としての過激さ、過酷さにあったと思います。
 また我々の空手が一大ムーブになるきっかけは、創始者が主人公となった漫画とともに、我々の空手の試合の過激さ、過酷さが、映画を通し映像として多くの人の目に止まる機会を得たからだと思います。

 我々の空手の試合が魅せる過激、過酷さは、今の格闘技を模したエンターティメントがネット配信で見せているような過激さとは違います。
 我々の空手が昔、一大ムーブを起こしたのは、我々の空手が魅せる過激、過酷さが、武道の本質にのっとった空手の真価を多くの人に伝え、そして共感を得たからだと思います。

 試合における過激、過酷さは、我々の空手の真価の一つです。

 一大ムーブを引き起こした我々の空手の試合は、昔は今の大会カテゴリーで言えば一般上級の部 ( 高校生以上の男子のみが出場資格 ) のみでした。
 今の大会は老若男女、色んな世代に門戸が開かれ、多くの各世代・男女別の競技部門で防具での安全性が配慮されていますが、昔の試合は一切防具を付けていませんでした。
 それゆえ昔の選手は、血気盛んな若者に必然的に限られていましたが、私が試合に出るようになった 30 年前くらいから金的サポーターだけは付けるようになりました。
 昔とは様相が変わった今の大会ですが、昔の試合は今の大会では一般上級の部として、我々の空手の真価をたたえたまま今に残っています。

 その一般上級の部、私が我々の空手を始めだした頃が選手層の厚さはピークとなり、それ以後は色んな影響で少しずつ選手層が薄くなり、今は実感としてピーク時の半分以下の選手層のように個人的に思います。
 今の大会は一般上級の部への参加者が昔に比べて極端に少なくなりましたが、〝100 人のうちに一人〟という我々の空手のフレーズは、今は白帯の入会者が黒帯になることよりも、入会者が稽古を重ねて強くなり、一般上級の部へと挑戦するフレーズにふさわしいように個人的に思います。

 先日の日曜日 (2/12) に行われた第 2 回香川県空手道選手権大会、幼稚園の頃に入会したある道場生が 12 年の時を経て、一般上級の部に初挑戦しました。
 結果は優勝、一般上級の部での上出来のデビュー戦となりました。

 先述のとおり我々の空手の試合の真価は、今の大会のカテゴリーで言えば一般上級の部にあります。
 先のブログに書きましたが、空手の試合は空手の武道性を高めるものであり、その武道性はこれからの社会の希望となる精神を有するものです。
 個人的には試合における空手の武道性の高揚は、我々の空手の真価である一般上級の部において一番高まるものと思います。
 一般上級の部にデビューした道場生は、防具を付けるセーフティールールでこれまで試合をたくさん重ねてきましたが、これからは新たに踏み出したカテゴリーで自身の武道性を高めるべく試合を重ねて行って欲しいと思います。

 そういった意味で彼は新たなスタートラインに立ったと思いますが、私はそのスタートラインを〝100 人の一人のスタートライン〟だと思います。

 〝100 人の一人のスタートライン〟
 約 30 年前に「黒帯になるのは 100 人の入会者のうち一人」と言われていたように、今の空手界の現状では、入会者が一般上級の部に挑戦するまでになるには、誇張でなく実際のところ 100 人に一人くらいに思います。
 願わくは、多くの新極真会徳島西南支部の道場生に、我々の空手の真価に至る〝100 人の一人のスタートライン〟に立って欲しいと思います。

 しかし〝100 人の一人のスタートライン〟は、人、それぞれに合ったスタートラインがあると思います。
 またスタートラインは一つでなく、いくつものスタートラインがあると思います。 道場生には空手の真価に至るスタートラインに立って欲しいと思う一方、道場生が人生をかけて立つべきスタートラインは空手以外にもあると私は思います。
 自分あったスタートラインを見つけることが大切だと思いますが、ただ道場生にはそれぞれの〝100 人の一人のスタートライン〟を必ず見つけて欲しいと思います。

 色んな分野で自分唯一の〝100 人の一人のスタートライン〟を見つけ、そのスタートを切ることでオンリーワンの自分の豊かな人生の道は開けるものと思います。
 豊かな人生の道が広がる〝100 人の一人のスタートライン〟ですが、自分にあったスタートラインを見つけてスタートを切っても、その道を進むことは容易なことではありません。
 その道には、様々な困難が待ち受けています。
 その困難を道場生には、空手で培った武道性で乗り越えていって欲しい思います。
 道場生は自分の〝100 人の一人のスタートライン〟に連なる道を困難に負けずに進んでいくことで、我々の空手を学んだ意義を感じることが出来ると思います。

 新極真会徳島西南支部の道場生が、我々の空手の学んだ意義をそれぞれの自分の道において感じるように導くべく、私は約 30 年前に一人で切った空手のスタートラインから連なる自分の道を歩んで行きたいと思います。

 < ご案内・道場生対象 >
 明後日 (2/19) の日曜日は四国・岡山合同稽古です。
 参加する道場生の皆さんは頑張りましょう !!
 なお今回は愛媛県新居浜市の山根総合体育館で行われます。
 稽古場所にご注意ください。
 ( 大会案内 )
 第 40 回全四国空手道選手権大会…4/16 ㈰、高知市開催、支部内締切り…3/3 ㈮
 第 1 回兵庫県空手道選手権大会…4/30 ㈰、神戸市開催、支部内締切り…2/23 ㈭
 第 1 回全四国空手道選手権大会・武神杯…4/30 ㈰、徳島市開催、支部内締切り…3/11 ㈯
 第 5 回徳島県フルコンタクト空手道選手権大会・オアシス杯…5/14 ㈰、三好郡東みよし町開催、支部内締切り…3/7 ㈫
 現在、以上の大会の申込書を配布中です。
 出場希望の道場生は指導員まで申出てください。
 2.17.2023 記