空手のススメ、徳島の田舎道場から

written by 逢坂祐一郎(新極真会 第8回世界大会 2位)

共感力のススメ、自分の幸せを感じる調和の共感力

 今読んでいる本に「成熟した大人とは、共感する力のある人」という一文がありました。
 また
 〝人間関係に関わる様々な実体験を経て、人は「自分がこういうことをすれば、相手はこんなふうに感じる」ということを五感を通じて学習します。
 その過程で想像力が育まれれば、初めてのことや困難に直面したときも、想像力を働かせて解決しようとする姿勢が身につくでしょう。
 また言ってはいけないこと、やってはいけないことを経験的に理解し、人を傷つけるような行動に歯止めをかけることもできるようになる。
 そんな風に想像力が身につけば、おそらく子どものころに「共感する力」のようなものが芽生えるはずです。
 相手には相手の考えがある、相手のルールがあるということを理屈でなく感じ取れる力は、人を幸せにしてくれます。〟
 との一節もありました。

 上記の一文、一節は個人的に非常に興味深く感じます。

 共感という言葉を改めて調べてみると「他人の考え、主張、感情を、自分もその通りだと感じること」とあります。
 しかし上記の一文、一節での〝共感〟は「自分もその通りだと」と相手の考えに従属することでなく、相手と自分の考えが違っていても「他人の考え、主張、感情を感る」ことで、相手の考えを許容することであるように思います。
 かいつまめば、ここでいう〝共感力〟とは「他人を感じること」であるように思います。

 空手は対人の技であるがため、「相手を感じる」共感力が必須なものです。
 例えば自分の突きを当てるのであれば、受けにくい相手のタイミングなどで突かねばならず、蹴りをディフェンスするには、相手の蹴りの距離などに応じて受けるか、躱さなければなりません。

 空手においては、相手のタイミングや距離などを感じ取る共感力は、空手の技量のそのものであるように思います。

 空手において、その共感力が最大限に必要な技はカウンター、武術用語でいう〝先 ( せん )〟であると個人的に思います。
 カウンター、先は相手の間合い ( タイミングと距離 ) に合わせて技を出しますが、それを成功させるには相手の間合いを感じる〝共感力〟を必要とします。


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 カウンター、先は私の得意技であり、私の教える空手の特質でもあります。
 道場生にはカウンター、先を伝えて行きたいと思いますが、ただ単にカウンターの打ち方などを教えるだけでは不十分であり、上記の一文、一節から道場生の共感力を高める必要性があるように改めて思います。

 どのようにして、道場生の共感力を高めるか ?

 それには特段の工夫は要らないように思います。
 上記の一節は「想像力が共感力を養う」とも要約できると思います。
 「自分がこういうことをすれば、相手はこんなふうに感じる」
 「言ってはいけないこと、やってはいけないことを経験的に理解し、人を傷つけるような行動に歯止めをかける」
 といった想像力は、空手の稽古を真摯な姿勢で取り組めば、自然と身につくものだと思います。

 真摯な姿勢とは、我を立てないことだと思います。
 我を立てない、自分のことしか考えない、自分の心を自分のことだけでいっぱいにしない、心の余裕をもうけることが想像力を生む余地になるのだと思います。

 空手の稽古において、我を立てない、真摯な姿勢を身につける第一歩は、指導者の言葉によく耳を傾けることだと思います。
 私は空手を本格的に習い始めた頃、指導してくれる師範や先輩の言葉は、時に理解できないことがあっても全力で聞くようにしてきました。
 空手を本格的に習い始めて 30 年が過ぎた今でも、自分が教わりたいと思う方の言葉は全力で聞くようにしています。
 私が得意とするカウンター、先は空手を本格的に習い始めた頃に教わった師範の約束組手が契機になっていますが、昔からの全力で聞く姿勢が今の私のカウンター、先の技となっている自負があります。

 指導者になった今、噛み噛みで拙い言葉での私の指導であっても、道場生には全力で私の言葉に耳に傾けるように導いて行きたいと思います。
 その導き方は、また別のブログで書きたいと思いますが、上記の一節の結びは「共感力は人を幸せにしてくれる」と要約できると思います。
 自分の幸せは、人に教えてもらうといったことでなく、行き着くところ〝自分の幸せを自分の五感をもって感じ取ること〟だと思います。
 人への共感力は「相手には相手の考えがあるように、自分にも自分の考えがある」といったように、自分と人を調和させる〝調和の共感力〟に昇華されるものと思います。
 調和の共感力は、人への共感力と並立する〝自分への共感力〟も派生させるものと思いますが、自分への共感力こそが、自分の幸せを感じ取る力となるように思います。

 カウンター、先などは調和の共感力を空手の技として、具現化させたものと個人的に思いますが、道場生の共感力を高めたいと思います。
 そして空手で共感力の源泉となる真摯な姿勢、その真摯な姿勢を培う指導者の言葉を聞く力を高めるために、道場生が私の言葉を聞き取りやすくなるように、もう少し滑舌は良くせねばと…。

 < ご案内 >
 3/5 ㈰に東京都、武蔵野の森総合スポーツプラザで第 2 回青少年フルコンタクト空手道選手権大会が開催されます。 
 同大会に私、逢坂が審判業務で参加するため以下の稽古をお休みさせていただきます。
 3/4 ㈯…美馬道場、鴨島道場全クラス
 3/6 ㈪…阿南道場全クラス
 3/7 ㈫…徳島市加茂道場全クラス
 関係者の皆様、よろしくお願い致します。
 さて同大会にはタイシン君、ルキ君、リコちゃん、タイセイ君が新極真会徳島西南支部から出場します。
 皆んな、最高峰の舞台で自分のベストを尽くして頑張れ !!
 3.3.2023 記