2022-04-28

50 歳を迎える現実と希望、肉離れと予測ディフェンス

　先日の稽古でのスパーリング中、「来たら ( 突き、蹴りが ) 躱す」「来る前に躱す」と道場生に声かけしました。
　声をかけられた道場生は一瞬不可解な表情を浮かべていましたが、「来たら躱す」は当たり前のことですが、「来る前に躱す」とは可笑しな言い方です。
　そもそも突き、蹴りが来る前、自分に放たれていないのに躱しようはありません。
　しかし大抵の突き蹴りは、放たれる前の予備動作があるものです。
　そういった予備動作を〝起こり〟といいますが、起こりに反応・反射するディフェンスが「来る前に躱す」といったことであり、その一例が下の動画です。

www.youtube.com

　私が突きを仕掛けるもディフェンスされ、突きから繋ぎのスムーズな蹴りまで技を返されていますが、この蹴りは足が自分に放たれてくるのに反応していては、動画のような躱し方はなかなか難しいものです。
　蹴る足が地面から離れる間際 ( 予備動作 ) には躱す体勢に入っていますが、予備動作＝起こりに対する反応・反射は予測のディフェンスとなります。
　予測のディフェンスは、「来たら躱す」先天的な資質によっては最初から可能な動態視力的なディフェンスと異なり、最初から身に付いているものではありません。
　組手、スパーリングを長年重ねた経験によって身に付きます。
　経験が技の源泉となるがゆえに、年齢に技の練度が相応します。
　添付動画のディフェンスが出来た瞬間は「我ながら良い反応・反射」と思い、スパーリングを欠かさずに来て迎える 50 歳も満更でない気分となりましたが…、しかし。

　一昨日の稽古指導で後ろ回し蹴りの見本を見せた際、太腿の裏の筋肉が肉離れを起こしました。

　やはり 50 歳に相応して、体は確実に衰えているようです。
　一般的に 50 歳を迎えると反応・反射は鈍くなりますが、空手にはそれをカバーする技術があります。
　そういった技術は、加齢ともに精度も高まります
　自身が加齢ともに高まる技術を実感し、これからのさらなる高まりへ希望を膨らませた矢先に、昔は難なく出来ていたことでの怪我。
　50 歳を迎える現実と希望を、ここ数日で皮肉なことに両方味わいました。
　アラフィフの現実と希望の狭間で、若い道場生とスパーリングを続けて行きたいと思います。

　< 支部内連絡 >
　明日からゴールデンウィークとなりますが、新極真会徳島西南支部はカレンダー 4/29 ㈮、5/3 ㈫、5/4 ㈬、5/5 ㈭の通常稽古が休みとなります。
　なお 5/3 ㈫には、支部内強化稽古を行いますが、案内したニュースレターには 5/3 ㈬と誤記しています。
　正しくは 5/3 ㈫ですので、道場生、保護者の皆様、よろしくお願い致します。

　昨日の鴨島道場
　少年部フィジカルクラス (18 時 20 分～18 時 50 分 )

　少年部クラス (19 時～20 時 )

　一般部クラス (20 時 15 分～21 時 30 分 )

　4.28.2022 記

新極真会徳島西南支部は随時入会者を募集しています。
興味のある方はお近くの道場に、お気軽に見学・体験にお越しください。
お問い合わせはホームページより、「逢坂(おおさか)道場」でご検索ください。
<徳島市の道場>
★徳島市加茂道場
稽古日…火曜日
稽古場所<加茂名コミュティセンター>
徳島市庄町5丁目48番地の5
少年部フィジカル&スパーリングクラス…18時30分～19時
合同基本クラス…19時10分～19時40分
一般部テクニック&スパーリングクラス…19時45分～20時45分
稽古日…金曜日　
稽古場所<加茂コミュニティーセンター>
徳島市北田宮町4丁目6番60号
少年部クラス…18時30分～19時30分
一般部クラス…19時45分～21時15分
<吉野川市鴨島町の道場>
★鴨島道場
徳島県吉野川市鴨島町鴨島234<常設道場>
稽古日…水曜日
少年部フィジカルクラス…18 時 20 分～18 時 50 分
少年部クラス 19 時～20 時
一般部クラス…20 時 15 分～21 時 30 分
稽古日…土曜日
少年部アドバンスクラス…15 時 45 分～17 時 15 分
選手クラス ( 小 5 以上 )…17 時 30 分～19 時
一般部クラス…19 時 15 分～20 時 45 分
<美馬市美馬町の道場>
★美馬道場
徳島県美馬市美馬町字大泉51-1
<常設道場・旧重清東小学校>
稽古日…木曜日
少年部クラス…19 時～20 時
一般部クラス…20 時 15 分～21 時 30 分
稽古日…土曜日
合同アドバンスクラス…10 時～11 時 15 分
<阿南市の道場>
★阿南道場
稽古日…月曜日
稽古場所 < 黒津地コニュニティーセンター >
阿南市黒津地町新弥開16-1
合同 1 部クラス…18 時～19 時
合同 2 部クラス…19 時 15 分～20 時 15 分
アドバンスクラス…20 時 30 分～21 時 30 分
稽古日…土曜日
稽古場所 < 阿南市武道館 >
徳島県阿南市大潟町210-56
合同クラス 1 部…18 時～19 時
合同クラス 2 部 ( 選手稽古 )…19 時 15 分～20 時
<三好郡東みよし町の道場>
★三加茂道場
三好郡東みよし町加茂西庄　　
<三加茂町農業者トレーニングセンター>
稽古日…水曜日・金曜日
合同クラス…19 時 30 分～20 時 30 分
<三好市池田町の道場>
★池田道場
三好市池田町三縄<三縄公民館>
土曜日
合同クラス…19 時 30～20 時 30 分
少年部クラスは小学生以下、一般部クラスは中学生以上、合同クラスは少年部、一般部が対象です。
希望者は小学生でも一般部クラスでの稽古は可能です。

2022-04-27

親御さんがお子さんに願う〝気持ちのあり方〟〝道義的感情〟が必然的に起こる状況

新極真空手

　親御さんにあっては〝気持が強くあって欲しい〟〝思いやりを持って欲しい〟などと、お子さんに願う方は多いと思います。
　空手道場にお子さんを通わせる保護者様にあっては、一層その思いは強いと思います。
　幸なことに新極真会徳島西南支部では、「気持ちが強くなった」「人を思いやれるようになった」などの保護者様の声を、時より聞かせていただくことがあります。
　そういった声が届く背景には、「打たれたら打ち返す」「相手が泣き出したら力を抜く」などの、口頭での指導の功があるかと思います。
　しかし、何よりも効果が大きいのは〝打たれたら打ち返す気持ちを持たなければならない状況〟〝泣いている人のことを思う状況〟などの、保護者がお子さんに願う〝気持ちのあり方〟〝道義的感情〟が必然的に起こる状況に身を置くことがの方が大きいと思います。

　その状況とは、空手においては組手、スパーリングです。

　空手の組手、スパーリングにおいても、我々フルコンタクト空手のように実際に突き蹴りを相手に当てる組手、スパーリングの方が親御さんのお子さんへの願いに沿うものだと個人的には思います。
　我々の空手は、打たれたら打ち返す気持ちが湧く前にその気持ちが萎えてしまうこと、泣いている人のことを思う前に自分が泣いてしまう状況に陥る可能性もありますが、その状況に立たなければ本当の〝強い気持ち〟〝思いやりは〟は育たないと思います。
　術技の真実は実践の中に有りと定めるのが我々の空手ですが、口頭では真実＝本当は伝えきれないものです。
　実践＝状況である組手、スパーリングを重んじることで、道場生の心技体を高めて行きたいと思います。

　< 支部内連絡 >
　香川錬成大会の申込書が準備できました。
　出場希望の道場生は指導員まで申し出てください。

　昨日の徳島市加茂道場
　少年部フィジカルクラス (18 時 30 分～19 時 )

　合同基本＆テクニッククラス (19 時 10 分～19 時 40 分 )

　一般部アドバンスクラス (19 時 45 分～20 時 45 分 )

　4.27.2022 記

2022-04-26

30 年越しの伝統継承〝前羽の構え〟

新極真空手

　先週の居残りスパーリング。

www.youtube.com

　最近個人的に取り組んでる〝前羽の構え〟を。
　急に思い立ち取り入れてみましたが、前歯の構えは、構え自体で相手にプレッシャーをかけることができ、居残りスパーリングのような形式のスパーには向いているかと。

　この前羽の構えは、私が黒帯を取得するまでの大学時代にお世話になった道場の先輩が使っていました。
　今の JFKO 全本大会の前身である、全日本ウエイト制大会が一番レベルの高かった頃に準優勝した実績のある先輩です。

www.youtube.com

　先輩の使った構えは、今の大会よりも反則の取り方が甘かった当時でも押しの批判も受けたそうですが、当時の私たちの師範は「あれは前羽の構えだ」と、その技術の有効性を私たちに語ってくれました。
　今のルール基準では反則を取られる可能性が高いと思いますが、ルールを変えた組手ではやはり有効に思います。
　ルールの制限は組手の制限となり、その本質を見失わせる一面があります。
　しかし組手の制限により、特定の技が進化するなどの良い一面もあります。
　空手の組手稽古で個人的に大切に思うことは、空手の本質を見失わずに一つのルールに本質を求めず、柔軟にルールを解釈して組手を進化させていくことだと思います。

　新極真会徳島西南支部の居残りスパーリングで、競技ルールとは違うルールのスパーリングを行う意図はそこにあります。
　また組手は何よりも自身が行うことが大切ですが、組手を行い、そして続けていくためには常に自分の組手を進化させることが大切にも思います。
　私自身、自身の組手を進化させるべくスパーリングを実践し、色んな技を試みて行きたい思います。

　〝前羽の構え〟
　大学を卒業しておよそ 30 年になりますが、30 年越しの伝統継承といった感じで、居残りスパーリングで練り上げて行きたいと思います。

　昨日の阿南道場
　合同クラス 1 部 (18 時～19 時 )

　合同クラス 2 部 (19 時 15 分～20 時 15 分 )

　アドバンスクラス (20 時 30 分～21 時 30 分 )

　4.26.2022 記

2022-04-25

プロ修斗観戦、選手の高揚に感じる試合への覚悟、自分で自分を満たすもの

新極真空手

　昨日の日曜日 (4/24) は、親交させていただいている総合格闘技 Z ジムの選手の皆さんが参戦した、プロ修斗興行フォース 15 を応援観戦のために高松市に。
　見応えのある試合が多く、大変勉強にもなりました。

　プロ修斗は選手の高揚が感じ取れる格闘競技ですが、試合での高揚は選手の皆さんの試合へのモチベーションの一つになっているのではないかと推察します。
　そう思う理由は、私が経験してきたフルコンタクト空手での武道競技においても、プロ修斗で感じる試合での高揚があるからです。

　プロ修斗もフルコンタクト空手同様、その競技は一歩間違えば大怪我をしかねないリスクの高い競技です。
　個人的にプロ修斗の選手の皆さんの試合での高揚に、我々フルコンタクト空手の選手と同じ高揚を感じるのは、高揚の裏側にリスクを賭けた試合への覚悟を感じるからです。
　選手の高揚は、試合をする選手しか分からない自分を満たす感覚です。

　世の中は何かのモノ、もしくは誰かにと、自分以外のモノや人に満たされることが多いように思います。
　それは悪いことでは当然ありませんが、そういった世の中で自分で自分を満たすことは貴重なことだと思います。
　ましてやそれが、リスクのある格闘競技や武道競技のように自分への覚悟を元とするものならば、それは尊いようにも個人的に思います。
　Z ジムの選手の皆さん、昨日はお疲れ様でした。

　自らを満たすための、またのご活躍を祈念いたします。
　また新極真会徳島西南支部でも、自らの覚悟の元に自らを満たす選手を育成していきたいと思います。

　土曜日の指導
　美馬道場・合同アドバンスクラス (10 時～11 時 15 分 )

　鴨島道場・少年部アドバンスクラス (15 時 45 分～17 時 15 分 )

　鴨島道場・選手クラス (17 時 30 分～19 時 )

　鴨島道場・一般部クラス (19 時 15 分～20 時 45 分 )

　鴨島道場・居残りクラス (21 時～21 時 45 分 )

4.25.2022 記

2022-04-22

誰でも出来る技と誰でも出来ない技、稽古で汲み取る〝しよう〟とする気持ち

新極真空手

　昨日の美馬道場少年部クラスは、後ろ回し蹴りの練習を。

www.youtube.com

　私は後ろ回し蹴りなどは、滅多に指導しません。
　技は、誰でも出来る技と誰でも出来ない技があり、後ろ回し蹴りは誰でも出来ない技に属すると個人的に思うからです。
　出来ない技があっても空手の技はたくさん有り、組手、スパーリングは出来る技だけで事足ります。
　出来ない技に稽古時間を費やすよりも、出来る技に時間を費やし、出来る技を深めた方が良いと個人的には思うところであり、稽古は誰でも出来る技をメインに私は構成しています。

　ただ誰でも出来ない技であっても、それをしようとする道場生がいれば稽古の構成に頑迷になることなく、その〝しよう〟とする気持ちは汲み取るべきかと思います。
　誰でも出来ない技は難しい技でもありますが、空手への姿勢で大切ことの一つは難しいことに自ら取り組む気持ちです。
　空手の稽古は技を練り上げることも本質であれば、道場生の空手への姿勢を汲み取ることも本質であると思います。

　後ろ回し蹴りなどは体の柔軟性が出来る、出来ないの分岐点であり、本来ならば体の柔らかい時期である子ども達は誰でも出来る技と思いますが、難しく、本人が〝しよう〟と思わなければ身につくものではありません。
　教えていない難しい技に挑戦している道場生を見ると嬉しく思いますが、〝しよう〟とする子ども達の空手の姿勢を何よりも稽古で汲み取りたいと思います。

　< 支部内連絡 >
　3/27 の審査会で昇級した道場生の新しい帯が、メーカーによると注文が混み合っているらしくまだ届いておりません。
　また道着も同様に混み合っているとのことで、それに付随してサポーターも待っている道場生もいます。
　メーカーによると発送に今しばらく時間がかかるとこのことで、帯、道着、サポーターを待っている道場生の方、申し訳ありませんが、ご了承をお願いいたします。

　久しぶりに西南支部 T シャツを作ります。
　今回の色はグレーです。

　申込書を稽古にて全員に配布いますが、購入義務はありません。
　希望の方のみご注文ください。
　ただし在庫は用意せず、購入はこの機会のみとなりますので、よろしくお願いいたします。

　昨日の美馬道場
　少年部クラス (19 時～20 時 )

　一般部クラス部 (20 時 15 分～21 時 30 分 )

　4.22.2022 記

2022-04-21

勝利至上主義を抑制するための矛先、商業スポーツの影

新極真空手

　先般ある競技で小学生の全国大会が廃止されました。
　廃止の理由は極端な勝利至上主義を懸念してのことで、極端な勝利至上主義の一例としては、小学生に無理な減量を強いることなどがあり、その意図をスポーツ庁長官が個人の見解として支持するニュースが流れていました。
　私も全国大会が開催されている空手指導者として、空手界で時折見かける勝利至上主義は懸念します。
　しかし、かといって小学生の全国大会を廃止するのが適切かどうかは、疑念に思います。

　全国大会は、年齢を問わず参加者に広い視野を与えるものです。
　小学生などの子ども時代に視野を広げることは、子どもの人格形成に大きな影響を与えるものであり、広い視野を持って大人へと成長していくことは、多様な視点を持つ社会人への成長となり、将来担う社会的役割の幅を広げるものと思います。
　全国大会は本来、将来の社会を担う人材育成の場といっても過言ではないと思います。

　全国大会での勝利至上主義を危惧するならば、大事なのは全国大会を勝利至上主義に染めてしまわないことだと思います。
　そしてそれは小学生から全国大会の機会を奪うことでなく、競技を統括する団体や指導者の責任、努力に帰すべきものと思います。

　勝利至上主義は、スポーツエリートを育てるために起こるものと個人的に思います。
　現代社会ではアマチュアスポーツにおいても、その影に商業スポーツの臭いを感じることがあります。
　個人的な経験として、春の風物詩とも言えるアマチュアスポーツの全国大会で、疑心を感じるほど額の寄付金をノルマ化され苦労されている方を見かけました。
　商業スポーツを穿ってみると、スポーツエリートは自身の利益もあずかることが出来ますが、その周辺にも利益をもたらすように見えます。
　勝利至上主義の温床は、商業スポーツに浸り、スポーツエリートに取り巻く周辺あるように個人的に思います。

　勝利至上主義の弊害はスポーツエリート化する前の子ども達のみにあるものでなく、スポーツエリートにも及ぶもので、スポーツエリートが商業スポーツとしての価値が薄れるに従い、身を持ち崩してゆくニュースなどはよく目にするところです。
　商業スポーツの全てが悪い訳ではないと思いますが、身を持ち崩したスポーツエリートの問題に取り組む姿勢が見られないことは、商業スポーツの改めるべき点のように思います。

　スポーツの意義は本来、身を持ち崩すこととの対局にあるべきと思います。
　スポーツの目的の一端は、社会に貢献できる社会人の育成にあると思います。
　勝利至上主義を懸念し、その傾向を抑制しようとするならば、抑制の矛先は小学生よりも別の人たちにあるように私は思います。

　さて幼年世代からシニア世代のフルコンタクト空手の祭典、カラテドリームフェスティバル 2022 全国大会が 7/23 ㈯、7/24 ㈰の両日、東京体育館にて行われます。

　参加選手応募の案内が新極真会ホームページに記載されています。

www.shinkyokushinkai.co.jp

　応募はオンラインにて各個人で行いますが、その期間は 5/9 ㈪～5/18 ㈬です。
　コロナ禍で規模が縮小されていたドリームフェスティバルですが、今大会よりコロナ禍前のカテゴリーで開催される予定です。
　関係者としてスポーツの意義を包括する武道の観念をもって、同大会が勝利至上主義に染まらないように微力を尽くしたいと思います。

　昨日の鴨島道場
　少年部フィジカルクラス (18 時 20 分～18 時 50 分 )
　少年部クラス (19 時～20 時 )

　一般部クラス (20 時 15 分～21 時 30 分 )

　4.21.2022 記

2022-04-20

〝勇怯の差は小なり責任感の差は大なり〟武道から見えてくる責任感

新極真空手

　武道を謳う空手道場はたくさんあると思います。
　私が支部長を務める新極真会徳島西南支部も武道を標榜する道場ですが、「武道とは何ですか ?」と、もし問われれば、ブログでよく書くことですが、私は「武道とは武士道です」と答えます。
　武士道とは武士としての精神美、行動規範ですが、その様々な徳目の中で勇怯 ( 勇気のあることと、臆病なこと ) に関わることは重きをなします。
　無論、勇が尊ばれ、怯は卑しまれるものですが、その尊卑は単純なものではありません。
　武士道における勇は、怯を元にするものでなければなりません。
　武士道は生死を分かつ戦いを前提とするものですが、戦いは誰でも怖いもので怯むのが当たり前のものです。
　戦いの恐怖を克服するのが勇であり、勇は怯の元に成り立ちます。
　恐怖の克服は自己の精神のコントールであり、そのコントロールから具体的な克服に至る知恵などの副産物が生まれ、勇は自らを高しめるものとして尊ばれます。

　私が指導する空手は生死を分かつほどではありませんが、時には厳しいダメージを負う戦いである組手を本質とします。
　組手を本質とする空手では、道場生の勇怯が見えてきます。
　私は組手における怯を、勇に繋がるものとして否定しません。
　道場生には怯と勇は表裏一体ものとして、自らも自らの怯を否定せずに怯を勇へと奮い立たせ、その勇奮を武道の本質の一つとして認じて欲しいと思います。

　余談ながら、勇怯という言葉を改めてネットで調べてみると〝勇怯の差は小なり責任感の差は大なり〟という言葉に行き当たりました。
　この言葉は、太平洋戦争の終戦時期に陸軍大臣を務めた大将・阿南惟幾という方のものです。
　言葉の意味としては「怯む心は誰にでもあるものだが、その心に負けて自分のなすべきことを見失ってはならない」「怯みながらも自分の責任を果たさなければならない」といったことのようです。
　阿南大将は終戦の日に戦争の責任を負って自決した方で、すぐれた人格者だったそうです。
　徳島にもゆかりのある人物で、武士道の典型として名高い乃木希典大将に強い影響を受けたそうです。
　武士道は現代社会においても、人の生き方として大切な責任にも言及するものです。