空手のススメ、徳島の田舎道場から

written by 逢坂祐一郎(新極真会 第8回世界大会 2位)

身体を使った気遣いのススメ、空手の稽古で身につく良質な社会的マナーの下地

 先ごろ、ある職場の人が「皆んな自分の事ばかり考えて、人 ( 同じ職場で働く同僚たち ) の事を考えていない。」と、職場の人間関係の行き違いを嘆いているのを耳にしました。
 そう嘆いている人も、職場の同僚がよく出入りする倉庫の入り口に、出入りに邪魔になるように自分の使った台車を置きっぱなしにする人だったので内心、可笑しく思いました。

 また、私は温泉が好きで近くの温泉によく行きますが、先ごろ温泉に併設されているサウナで、ある来場者が「この前は客が多くて、湯船の湯が汚かった。」と、その来場者の知人に愚痴っているを耳にしました。
 サウナに入る人の多くは、サウナの後に身体を冷やすために水風呂に入りますが、そのためにはサウナで掻いた汗を水風呂に入る前に流して入るのが常識です。
 しかし田舎では大半の人がサウナから出ると、そのまま汗を流さずに水風呂に入ります。
 「湯が汚い」と愚痴っていた来場者も、サウナから出た後そのまま水風呂に入っていましたが、「湯が汚いのは気にするのに、自分の汗で水が汚くなるのは気にならないんだ」と、それも内心、可笑しく思いました。
 ちなみに、私はサウナから出ると必ず汗を流してから水風呂に入ります。

 上記の 2 件の話ですが、2 件は〝自分の事を棚に置く〟といった共通点があります。
 今更ながらの事ですが、〝自分の事を棚に置く〟とは「自分にとって都合の悪いことに目を背け(て他人の同じ点は非難す)るさま」との意味のことわざです。
 「自分にとって都合の悪いこと」に単に気づいていないのだったら、ただの滑稽であるのですが、人に対する傲慢さ、横柄さで「自分にとって都合の悪いこと」気づかないのであれば、それは笑えるものではありません。
 私は「田舎の人間は傲慢」とよくブログで書きますが、田舎の人間の傲慢さによる弊害の一つは、他人の利害には無頓着なのに、自分の利害には執着することです。
 上記の 2 件は可笑しく思いつつも、ため息が出るような田舎の悪弊を感じる出来事でした。

 ところで先日、道場への到着が私と同じタイミングとなった幼稚園の道場生がいました。
 私が道場の鍵開け、その道場生を先に道場に入室させましたが、彼は先に入室したあと、開いたドアを自分の手で開いたままにして、私が入室するのを待ってくれていました。
 その道場生は年柄相応の部分もありますが、稽古への集中力を欠き、よく稽古中に注意しますが、彼が私が入室するまでドアを開いたまま待ってくれた事は「幼いのに、こんな気遣いが出来るんだ」と、ちょっと驚きでした。

 そして上記の 2 件が、この出来事の前にあったことで、2 件の当日者が私よりも年齢の上の中高年の人たちだったことも重なり、幼いながらも見せた道場生の気遣いが、とても尊いものに思いました。
 また「幼稚園の幼い子どもが人に気遣いが出来るのに、なぜ、いい年をした大人が自分の事は棚に置き、人への気遣いができないのか ?」とも思いました。

 田舎の大人の場合、個人的には田舎の悪癖である傲慢さが、人への気遣いを欠く要因の一つにあると思いますが、一番の要因は〝身体を使った気遣い〟をしてこなかったことにあるように思います。

 人への気遣いは、現代社会ではマナーとして家庭、学校などで学ぶものです。
 しかし家庭や学校で学ぶマナーは単に知識的、作法的に学ぶことが多く、ドアを開けたまま待っているような人に対する気遣いとしてのマナーを相対的に直接相手へと、また身体反射的に学び、身に付ける機会は少ないように思います。

 自分の身体を使い相対的、身体反射的にマナーを身に付けていないため、田舎のような傲慢さを悪癖に持つ人間社会 ( 田舎だけに限りませんが ) では、自分のことは棚に置くようなマナーの悪い対人感覚が生じてくるように個人的に思います。

 マナーは社会に不可欠なものです。
 相対的、身体反射的な良質な社会的マナーを身に付けるには、自分の身体を使って人に対して気遣いをする習慣を持つことが有効と思いますが、空手はその習慣を稽古として行う武道です。

 空手の稽古では、ミット稽古などの対人稽古を行います。

 私はミット稽古ではミットの持ち手に対し、ミットを打つ人が打ちやすいようにミットを持つように指導します。
 持ち手がミットを持つ角度などがデタラメだったりすると、ミットを打つ人はひどく打ちにくいものですが、打つ人が打ちやすいミットの持ち方は自分がミットを打つことを考えれけば自然と分かるものです。
 〝打つ人が打ちやすいようにミットを持つ〟ことが肝要なミット稽古などは、〝身体を使った気遣い〟を養うものに思います。
 また空手の対人稽古はミット稽古に限らず〝身体を使った気遣い〟を養成しますが、〝身体を使った気遣い〟を養う空手の稽古は、良質な社会的マナーを身に付ける下地になると思います。

 傲慢さに毒されず、横柄さに凝り固まっていない子ども時代は、良質な社会的マナーを身に付けるのに最も適した時期と思います。
 新極真会徳島西南支部では、子ども達が〝身体を使った気遣い〟を養い、良質な社会的マナーを身に付ける下地を養成する空手の稽古を指導していきたいと思います。

 < ご案内 >【新極真会徳島西南支部、道場生・保護者様対象】
 本日の火曜日 (4/30) は、阿南道場 ( 黒津地コミュティーセンター ) で振替稽古を行います。
 そのため、本日の徳島市加茂道場はお休みとなります。

 また 5/3 ㈮~5/6 ㈪の期間は連休のため、新極真会徳島西南支部の各道場の稽古は全クラスお休みですが、以下の通りに支部内強化稽古、四国・岡山合同稽古が行われます。

 5/3 ㈮…支部内強化稽古 ( 鴨島道場にて 9 時から 12 時 )

 5/6 ㈪…四国・岡山合同稽古 ( 愛媛県新居浜市・山根総合体育館にて 11 時~15 時 30 分 )

 参加する道場生の皆さんは、頑張りましょう !!

 4.30.2024 記