視点を前に向ける武道精神のススメ、56歳からの21年間 - 空手のススメ、徳島の田舎道場から

　「今が大切」「大事なのは今」と、よく言われます。
　確かに「今」は大切であり、大事です。

　しかし今にあって、視点をどこに定めるかによって、その大切さ、大事さは、よほどに違ってくるように思います。

　今は過去になり、未来が今になります。

　今→過去、未来→今。

　偏見的な視点かもしれませんが、今にあって視点を過去、後ろに向けると、それは前回のブログと被りますが〝執着心〟や〝我執〟が起こりやすいように思います。

　それに対し、今にあって視点を未来、前に向けると、来たるべき未来を良くするために〝今なすべき〟ことを考えるような〝向上心〟が生じやすいように私は思います。
　視点を過去、後ろに向けることも悪いことばかりでなく、良いこともあると思いますが、私は不肖ながら武道としての空手指導者を任ずるものです。

　多岐に渡る武道精神においては、向上心を含み、また不慮の事態に備える護身の心構えなども、その精神に含むことから武道として空手を修練するものは、おおむねとして今にあって定める視点は前、未来とすべきに思います。

　さて、一昨日の日曜日(12/15)は審査会でした。
　今回の審査会では昇級、そして昇段審査が行われました。

　昇段審査では、初段、また二段、三段を受審する道場生の皆さんがいました。
　その中のお一人、三段を受審された阿南道場の指導員でもある武田二段は現在76歳です。

　同じく、三段を受審された西谷師範代は私と同い年の52歳ですが、私とは腐れ縁とも言える古い付き合いで、二人とも身体にガタがくる年齢となりました。
　そんな西谷師範代が昇段審査に向けての稽古の折に、ふとっ「武田先輩って初段になった時、55 歳だったんよな。」「それ考えると、52 歳の俺らが身体がどうの、こうの言うとれんな。」と口にしました。

　その言葉を聞いて、私は現在52歳の我々が到達していない55歳の年齢から76歳までの武田二段の21年間という時間に思いが巡りました。
　「20年なんてあっという間」などと言われたりします。

　確かに、今の私の52歳という年齢において、過去の自分自身の20年などは、あっという間でした。
　10 代、20 代のころは自分が 50 代になるなんて想像も出来ませんでしたが、その想像も出来なかった年齢になってから、さらにそこからまだ到達していない年齢からの先の自分の20年間を思うに、私は芒洋(ぼうよう)たる思いがしました。

　自身に巡らせてみると芒洋たる20年間を武田指導員は、1年加えて21年間、空手の修練の継続を一つのご自身の人生の足取りとして歩まれ、そして今だに歩まれています。

　その歩みは、空手では普段、先生として偉そうなことを言わせてもらっていますが、人として後進である私から見れば仰ぎ見る歩みです。
　武田二段にあっては、ご自身のこの21年間はあっという間だったかもしれませんが、しかし21年間の歩みは平坦なことばかりではなかったと思います。
　武田二段が、空手修練者として、そして人としてもブレることなく積み重ねられた 21 年間の歩みは、ご家族のご理解、支えなどもあったと思いますが、何よりは武田二段の武道精神こそが歩みの根幹であったと思います。