空手のススメ、徳島の田舎道場から

written by 逢坂祐一郎(新極真会 第8回世界大会 2位)

空手における情緒と情操のススメ、思い出深い試合と大会

 先日、昔の稽古仲間が添付動画 (8 分と少し長いですが、よろしければご覧ください。) の存在を教えてくれました。


www.youtube.com

 この動画は、この大会も共に戦った私の師匠筋に当たる先輩がアップされている動画を編集しました。

 私が 21 歳の頃の試合で当時は大学生で山口県在住であり、山口県宇部市で開催された大会です。
 山口県の地元選手として出場していますが、私の最も思い出深い試合であり大会です。
 思い出深い試合となった理由の一つは、この大会には我々の空手の創始者を始めとする、今では様々な理由で一緒に会することのない選手、師範が参集した大会であるからです。

 またもう一つの理由は、動画のとおり私は相手選手のスタミナと粘り強さに屈服し最終延長で敗退しましたが、相手選手の強さに大いに感化されたことにあります。

 試合序盤は体格差で自分の優位を感じていましたが、試合が進むにつれ下がらせても技を返してくる粘り強さに気持ちが怯み、自分のスタミナを失っていきました。
 最終延長ではどうにか前には出ているもの、正直それも苦し紛れであり手数は相手選手が圧倒的であり、内心では完全に勝負対する執念で根負けしました。
 試合中、尽きることのない相手選手のスタミナと粘り強さには怯みを感じましたが、そのスタミナと粘り強さに、それを培った相手選手の豊富な稽古量も感じました。
 「このスタミナと粘り強さを身に付ける稽古を相手選手はしてきたんだ」と、相手選手の稽古そのものを肌を通し身体で感じましたが、試合後には「自分は稽古量の時点で負けており、まずはスタミナ稽古を」と思い、自分の敗因の認知は次の試合、大会に向けての課題となりました。

 先のブログで、空手における情緒と情操について書きました。
 ここでいう情緒は〝物事への感慨から派生する感情〟であり、情操は〝高い次元での感情〟です。
 上記の試合、大会が最も思い出深いものとなった理由の要因には、この試合、大会で感じた情緒と情操の深さにあります。
 試合での情緒は、相手選手のスタミナと粘り強さに感じた怯みであり、また豊富な稽古量に対する相手選手へのリスベクトです。
 そして情操は「自分もスタミナを付け、粘り強さを身に付けなければ」と思った自分への課題です。

 私は元々スタミナに課題があり、選手引退までにその課題を完全に克服した訳ではありませんが、この大会以後、スタミナ強化への意識は一層高め、動画の対戦選手とは以後 2 度対戦しましたが、2 度目の対戦はまた敗退しましたが、3 度目の対戦でどうにか勝つことができました。
 動画の選手以外にも選手現役時代、強い選手とはたくさんの試合をしてきましたが、思えば強い選手との対戦のたびに情緒としての敗因の認知 ( 時には勝因の認知もありましたが )、情操としての次の試合に向けての課題は募り、試合における情緒と情操は深まっていきました。
 強い選手とのたくさんの試合を経て深まった情緒と情操は、今振り返るに豊かな選手生活として、自身の胸の内の密かな誇りになったように思います。
 そして豊かな選手生活は、そのままプライスレスな人生の豊かさと私は感じています。

 またこの大会は先述のとおり、我々の空手の創始者である大山総裁、我々の空手の現在の長である新極真会代表・緑師範も列席された大会です。
 大会後のレセプションでは大山総裁の席に挨拶に行きましたが、その場で「君は強くならなればならない」「君には期待している」との言葉をいただきました。

 50 歳を迎え、近年物忘れが多くなってきた私ですが、上記の言葉だけは大山総裁の声色とともに今でもはっきりと耳朶に残っています。
 当時 21 歳の私はそれまでの人生のほとんどを、自分への強い劣等感ともに過ごしてきました。
 空手を始めたのはその劣等感を払拭したいがためですが、空手を本格的に始めて 30 数年が経過した 50 歳の現在、劣等感を完全に払拭した訳ではありませんが、自分の劣等感の受け止め方は変わりました。
 空手のお陰による自分への劣等感の変質についても、またブログで書きたいと思いますが、変質の大きな契機になったのは、この時の大山総裁の言葉です。

 大山総裁は今は知る人も少なくなったと思いますが〝ゴッドハンド〟との異名を取り、当時から神格化された存在でした。
 空手の神様からいただいた言葉は、自分を奮い立たせる感動となり、自分の可能性を信じる自信となりました。
 そしてそれまで漠然と目標としていた全日本大会の舞台をはっきりと意識し、そして出来るうるならば世界大会の舞台へと目標を飛躍させるようになりました。

 この大会においての私の情緒は感動と自信であり、情操は目標に向かうことです。

 空手は試合が情緒と情操を深め、そして大会もまた選手の情緒と情操を深めるものと思います。
 日々の稽古も情緒と情操を育むものでもありますが、空手は様々なシーンで情緒と情操を育み、深めるものと思います。

 その情緒と情操は人生の豊かさに繋がるものと思いますが、私は空手の情緒と情操で自分の劣等感を変質させ、豊かな選手生活を送ることが出来ました。
 豊かな選手生活を経て空手の指導者となった今、空手の情緒と情操を道場生に感じてもらえる指導者を目指して行きたいと思います。

 < ご案内・道場生対象 >
 明日の木曜日 (2/23) の美馬道場の稽古は祝日のためお休みですが、鴨島道場で以下のスケジュールで支部内強化稽古を行います。
 9 時~10 時…型稽古 ( 道着着用 )
 10 時 15 分~12 時 15 分…スパーリング・ミット稽古 ( 服装自由 )
 道場生ならば年齢等の参加制限はありません。
 4 月、5 月は大会が目白押しです。
 都合の良い道場生は頑張りましょう !!
 2.22.2023 記