空手のススメ、徳島の田舎道場から

written by 逢坂祐一郎(新極真会 第8回世界大会 2位)

誰にでも出来る空手のススメ、空手の〝誰にでも出来る〟は〝簡単に誰でも出来る〟ではない本質

 〝誰にでも出来る空手〟空手の宣伝文句でよく使われるフレーズです。
 新極真会徳島西南支部でも掲げる宣伝文句ですが、当道場で掲げる〝誰にでも出来る空手〟の〝出来る〟は具代的に空手の技を意図しています。

 例えば、添付動画最後の相手のパンチをボクシングでいうダッキングというディフェンス技術で躱して打つ、ボクシングで言うボディフック。


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 動きはボクシング的ですが、私的には技としては空手の稽古で練り上げた動作を基幹としており、空手の技でないような技でも空手の稽古をすれば、誰にでも出来るようになり、空手におけるところの〝出来る〟の意味合いに幅広さを付加しています。

 動画のボディフックは相手のパンチに対するいわゆるカウンター攻撃ですが、カウンターは空手、また武道全般的には〝先 ( せん )〟と言われる技術です。
 先は間合い ( タイミングと距離 ) の技術ですが、先を取るための間合いのタイミングと距離は、動画のボディフックに至る前に行っている相手のパンチに対するディフェンスで掴むのが、その手段の一つです。
 実際の技となる自分のパンチ被弾させるための間合いへの踏み込みは、空手の移動稽古で練り上げた足運び、カウンターのパンチはコンバクトであることが不可欠ですが、パンチのコンパクトさは空手の突きの要点を活かしています。

 上記の間合い、足運び、突きの要点を習得すれば、添付動画のようなボディフックは誰にでも出来るものですが、しかし実際は誰しもが簡単には出来るものではありません。

 出来ない要因としてカウンター・先 ( せん ) に必要な間合いがスパーリング、組手のような自由攻防で掴めない、間合いを掴んだとしても相手のパンチを避け、なおかつ自分のパンチを被弾させるためのスムーズな足運びが出来ない、間合いが掴めて踏み込みが出来てもコンパクトなパンチが打てない、といったことにあります。
 上記の出来ない要因を克服すれば良いのですが、しかし、その出来ない要因の克服こそが実は簡単でなかったりします。

 空手の稽古体系は、その克服方法を本来丁寧に示しています。

 克服方法は、すぐに身につく簡単なものではありませんが、根気、そして何より稽古への素直さがあれば、誰にでも克服できるものです。

 空手の〝誰にでも出来る〟は〝簡単に出来る〟ではないと、私は思います。

 空手に限らず宣伝的なフレーズの〝誰にでも出来る〟には、一般的に私は 2 つの〝誰にでも出来る〟があると思います。
 それは、何も労さず簡単に誰にでも出来るものと、誰でにでも出来るが出来るには努力が必要とするものです。
 私は空手は後者であり、後者でなればならないと思います。

 その昔、ワリカンで 100g 当たり 350 円の肉と 100g 当たり 700 円の肉を用意した友人とのバーベーキューで、私は 350 円の肉を 700 円の肉と友人たちに騙され「上手い、上手い」と食べ続けました。
 その傍らで友人らは 700 円の肉だけをほくそ笑みながら食べ続けていたのですが、そんな思い出のあるバカ舌な私ですが、卵かけご飯と親子丼の違いは分かります。
 卵かけご飯は誰でも簡単に作れる美味しい卵料理ですが、同じ卵料理でも親子丼は美味しいさを追求するならば、熟練な調理技能の習得が必要となり、美味しい親子丼は卵かけご飯よりも同じ卵料理ながら、玄妙な美味しさを味あわせてくれます。

 親子丼は空手のように、本来ならば誰もが簡単には美味しく作れないものだと思います。
 しかし、親子丼にはスーパーに売ってある親子丼の素のように、調理技能が必要とされる美味しさが、予めに用意された調味料が存在します。
 親子丼の素を使えば、誰もが簡単に美味しい親子丼が作れます。
 親子丼が誰にでも美味しく簡単に作れるようになったのは、経済至上主義におけるところのイノベーションに思います。

 あらゆる分野における経済至上主義のイノベーションによって、また経済至上主義によるコマーシャルが蔓延ることによって現代社会では、〝誰にでも〟=〝簡単に〟のニュアンスを多くの人が持つようになったと思います。

 しかし空手には経済至上主義のイノベーションは適応せず、空手の〝誰にでも出来る〟が〝簡単に出来る〟ではない本質は、変えようがないと私は思います。

 現代社会において当道場のように〝誰にでも出来る空手〟を掲げる空手が、空手の〝誰にでも〟が〝簡単に〟でないことを示すことは、一見詐欺のようであり、経済至上主義のコマーシャルのようには、人心を捉えるものではないかもしれません。

 しかし空手では、簡単に出来ないことを誰にでも出来ると示し、また出来るための稽古体系を丁寧に指導し、そしてその稽古体系に誰にでも出来るようになるための根気、素直さなどの心を説くことで、空手は〝空手道〟となり、空手道にはイノベーションが生み出した便利な商品とは違う、プライスレスな価値が見出されるものと思います。
 〝誰にでも出来る空手〟新極真会徳島西南支部の空手に、プライスレスな価値を高めるために掲げて行きたいと思います。

 < ご案内 >
 明後日 (2/12) の日曜日は第 2 回香川県空手道選手権大会です。
 スケジュールは大まかに以下の通りです。
 8 時 20 分…開場
 9 時 20 分…組手・錬成部門開始
 10 時 10 分~11 時 20 分の間に…型部問開始
 13 時 30 分…開会式・組手・県大会部門開始
 新極真会徳島西南支部は 8 時 20 分の開場で受付けが済み次第、組手・錬成部門のアップをします。
 型部門のアップは各自で行い、組手・県大会部門のアップは 12 時 20 分より行います。
 道場生、保護者の皆様、よろしくお願いいたします。
 なお明日 (2/11) の土曜日の美馬、鴨島、阿南の各道場は祝日のためお休みです。
 また来週の月曜日 (2/13) の阿南道場はお休みとなっておりますので、関係者の皆様、よろしくお願い致します。
 2.17.2023 記