空手のススメ、徳島の田舎道場から

written by 逢坂祐一郎(新極真会 第8回世界大会 2位)

整列を儀礼とせずに礼法とすることのススメ、整列に修練の要諦を取り入れる

 一昨日の日曜日 (3/24) は徳島市において、神武會舘さん主催の第 2 回全四国空手道選手権大会・神武杯 < 第 11 回徳島県空手道交流大会・併催 > でした。

神武會舘・西山館長、神武會舘のスタッフの皆様、大会に参加させていただき、ありがとうございました。

 新極真会徳島西南支部からは 24 名がエントリー。

 型でイッシン君、オウシロウ君が優勝、アヤネちゃん、アルト君が 2 位、イマリちゃん、カナト君、ユアちゃん、ヒナタ君、ソウシロウ君が 3 位。
 組手でエイタ君、アヤネちゃんが優勝、レイサ君、イッシン君 ( フェニックス戦 )、ソウシロウ君が 2 位でした。
 入賞できた人、惜しくも入賞できなかった人も、皆んなよく頑張りました。

 次の大会を目指して、また頑張りましょう !!
 保護者の皆様も、お疲れ様でした。

 さて話は変わりますが、複数で行う武道の稽古では、空手に限らず整列が稽古でよく用いられます。
 整列は整然と行い、そして整然とした整列から厳粛な雰囲気を醸し出すために、武道の稽古ではよく用いられます。

 私も稽古での整列は重視していますが、上記のような儀礼的な目的のみならず、主に下記の 2 点のような実質的な修練効果のためにも重視しています。

 整列における修練効果・その 1 < ポジション感覚 >
 私が指導する通常クラスの稽古では下記の図のように整列して、正座、準備運動、基本稽古…と稽古を進めていきます。

 2 列目以降の稽古参加者は、まず最前列者の真後ろに立つように指導しますが、人の真後ろに立つには、人の背面の正中線と自分の正面の正中線を合わせる事で、真後ろとなるポジションに自分の身を置く事ができます。
 空手の組手は、相対する対戦者に対しての立ち位置、身の置き所であるポジションが攻防の優位性を大きく左右します。
 組手のポジションは、相手に対する立ち位置からなる角度によってポジショニングされます。
 相手と真正面で向き合う正対が0度の角度とすると、相手を自分からして正面に据え、自分は相手に対して例えば45度の角度に位置取れば45度のポジショニングとなります。

 0 度のポジショニングでは正対するため双方の攻撃が 100% の効力で攻防されますが、45 度のポジショニングでは自分は 100% の攻撃効力を保持しつつ、相手にとっては感覚的に角度分のパーセンテージ、つまり 45% の攻撃効力が削減されることになります。
 自分の攻撃効力を保持しつつ、相手の攻撃効力を削減させることから、ポジショニングは組手の攻防を大きく左右するものです。
 組手においては、相手を中心にして自分に攻防が有利に働くポジショニングの角度を瞬時に割り出す感覚が必要となりますが、それが組手におけるポジション感覚となります。

 ポジショニングのためのポジション感覚は、相手の中心軸と自分の中心軸を合わせる 0 度の角度から有利な角度を割り出していくものですが、ポジショニングの基本となる 0 度の角度の感覚を身に付けることがポジション感覚には必須となります。
 整列は相手の正中線と自分の正中線を合わせることで、ポジショニングの基本となる 0 度のポジション感覚を身に付けるための有効な稽古となります。

 整列における修練効果・その 2 < 認知能力の向上 >
 私は少年部クラスのミット稽古で 2 列に道場生を整列させる時、下の図のようにミットの持ち手である A と B、ミットを打つ C と D を先に並ばせ、それを基準として E、F、G、H が A、B、C、D に倣って並ぶように指導します。

 A、B、C、D に倣えば、E、F、G、H のそれぞれの自分の並ぶべき位置は自明となりますが、A、B、C、D に倣うには認知能力が必要となります。
 認知能力は〝見る力〟〝聞く力〟〝想像する力〟などで、子ども達の学習能力の根幹となり、重大な犯罪を犯す少年に欠如している能力と言われています。
 認知能力は子ども達にとって成長期に高めるべき最も大切な能力ですが、上記のような整列で働かせる認知能力は基準に倣う〝想像する力〟を養うものです。
 年齢の低い子ども達は総じて、このような整列でまごつきますが、回を重ねることでスムーズに整列ができるようになります。

 〝想像する力〟を高める手段の一つには、上記のような基準に倣って〝想像できるシチュエーション〟を何度も経験することが適うかと思います。
 上記のような整列は〝想像できるシチュエーション〟を与え、空手の上達のみならず、子ども達の将来的な可能性を広げる、認知能力を高める修練効果があると個人的に思います。

 先のブログで礼法は、一般的な礼法においても武道修練の要諦が根底にあることを書きましたが、通常、整列は儀礼的になりがちです。

 しかし、上記のような修練効果を主眼にすることで、儀礼的な整列も礼法となるものに思います。
 新極真会徳島西南支部では、通常的な儀礼に修練の要諦を含ませ礼法とし、精錬された修練効果のある武道としての空手の指導を心掛けたいと思います。

 3.26.2024 記