空手のススメ、徳島の田舎道場から

written by 逢坂祐一郎(新極真会 第8回世界大会 2位)

型稽古で全体のテンポを合わすことのススメ、〝謙譲の美徳〟

 先々週の木曜日 (8/8) は、カラテドリームフェスティバル 2024 国際大会における徳島県人選手入賞者 ( 神武會舘・新極真会徳島北東あわじ支部・極真会徳島西南支部、各所
属選手 ) の徳島県庁表敬訪問に同行してきました。

 徳島県庁では後藤田知事、元木議長、中川教育長にご挨拶させていただき、新極真会徳島西南支部からはイッシン君とミオちゃんが参加しました。
 後藤田知事をはじめとする皆様には、暖かい労いの言葉をいただきましたが、皆様、お忙しい中、素晴らしい機会を与えてくださり誠にありがとうございました。

 また表敬訪問をお手配下さいました、新極真会徳島北東あわじ支部 < 支部長 > 前川師範をはじめとする関係者の皆様、ありがとうございました。

 先週の火曜日 (8/12) は、愛媛県松山市にて全四国錬成空手道選手権大会でした。

 大会を主催、運営された新極真会高知愛媛支部 < 支部長 > 三好師範、三好道場スタッフの皆様、大会に参加させていただきありがとうございました。

 新極真会徳島西南支部からは 25 名がエントリー。
 団体型でコウダイ君、イッシン君、リトちゃんのチームが優勝。
 個人型でリトちゃん、イッシン君が優勝、ウタ君が 2 位、リョウマ君が 3 位。
 組手でイッシン君、タイト君、ユウジ君、シントウ君が優勝、タイシン君が 3 位でした。

 出場した道場生の皆んな、よく頑張りました。
 皆んな、お疲れ様でした !!

 保護者の皆様も、同行、お疲れ様でした。

 一昨日の日曜日 (8/18) は福岡県福岡市で第 37 回全九州空手道選手権大会でした。

 新極真会徳島西南支部からはイッシン君、ウタ君が出場。
 二人とも残念ながら 2 回戦敗退でした。
 全九州大会は地方大会屈指のハイレベルの大会ですが、そこに挑戦すること自体、意義があります。

 イッシン君、ウタ君、よく頑張りました。
 保護者様も同行、お疲れ様でした。

 さて、空手の型稽古には、1 挙動ずつ指導者の号令 (1、2、3…の掛け声 ) に合わせて行う形式と、無号令 ( 始めと直れの開始と終了の掛け声のみ ) での形式があります。
 無号令で行う型稽古では、例えば 20 人で稽古を行う場合、20 人がてんでばらばらのテンポで行うのではなく、号令をかけたように 20 人のテンポが揃うことが望まれます。

 現代の空手の型稽古は整列して行うことが一般的ですが、型稽古で全体のテンポを合わすには、両隣や前後の人の気配を読んでテンポを合わせることが肝要になります。

 気配は目に見えないものですが、周辺視野 ( 目を動かさないで 1 点を集中して見る約 30 度以内の視野を「中心視野」と言い、それよりも外側のことを「周辺視野」と言います。)や周囲の人の動く音などで感じ取れます。
 私も無号令の型稽古では、周囲の気配を読んでテンポを合わせることを重視して指導します。
 無号令の型稽古では全体の動きが揃うと、稽古の景観として見栄えがします。
 その景観は美しく、団体型競技 (3 人同時に型の演武を行い、3 人の同調が主な判定基準となる ) のように、競技としての見応えにもなるものです。

 しかし、私が型稽古で全体のテンポを合わせることを重視する理由は、見栄えのためだけではありません。
 見栄えよりも、全体のテンポに道場生各個人が、自分のテンポを合わす意識を高めることを重視しています。

 他人のテンポに自分のテンポは合わせることは、空手の術技を身に付けるのにとても重要な要素となります。
 他人に〝テンポを合わせること〟は、他人の〝タイミングを計ること〟になります。
 またタイミングを計ることは、空手の術技として意味合いを深めると〝間合いを計る〟ことになります。

 すべての空手の術技には、間合いを計ることが必要になります。
 単純な例として、相手の上段回し蹴りを受けるとして、相手が蹴ってくるタイミング ( 間合い ) に合わせて受けないと、上段回し蹴りを被弾してしまいます。
 またディフェンス面のみならず、オフェンス面においても突き蹴りが当たるタイミングを相手の動きのテンポから計らないと、突き蹴りを効果的に被弾させることができ
ません。

 周囲、または対人的なテンポ、そしてテンポに連なるタイミング、間合いへの意識を深めることは、空手の稽古の要訣とも言えるものですが、その意識は稽古の景観、術技への作用に止まらず、武道精神を培い、高める意識にもなるものとして、私は指導において重視しています。

 私は、型稽古での全体テンポを合わせることを指導する場合、例えば 20 人が稽古する場合「自分 1 人が自分以外の 19 人にテンポを合わせてもらうのではなく、自分 1 人
が後の 19 人のテンポに合わせる意識を持ちなさい。」などと指導します。

 上記のような意識は、我々の空手の道場訓で謳われるところの〝謙譲の美徳〟となるものです。
 謙譲の美徳とは、ネットで調べると「人を先に立てて、自分は出しゃばらないという美しい行為。」とあります。
 昨今の世間の風潮には、謙譲の美徳の欠落を個人的に大いに感じます。
 謙譲の美徳の欠落の背景には、「他人を押し退けて、自分の我を押し通すことを我が利に思う」ような、浅ましさの人心への蔓延があるように思います。

 武道としての空手において、謙譲の美徳はテンポ、タイミング、間合いへの意識となり〝技〟となります。

 〝技〟を意味合いとして持つ、科学などにおける〝スキル〟や〝テクノロジー〟は物心ともに、個人または社会に利をもたらしますが、〝技〟は根本的に〝利〟となるもの
です。
 空手の〝技〟は〝組手の利〟となるものですが、〝美徳〟を〝技〟、そして〝利〟へと成すことは、武道を修練する意義の大切な一つです。
 型稽古で全体のテンポを合わすことは、一面的にスパーリングなどの 1 人に対する対人稽古よりも、タイミング、間合いへの意識を深める作用があります。

 新極真会徳島西南支部の道場生には、型稽古で周囲にテンポを合わせることで〝謙譲の美徳〟である武道精神を身に付け、謙譲の美徳により自分を活かす利となる〝技〟を身に付けて欲しいと思います。

 8.20.2024 記