空手のススメ、徳島の田舎道場から

written by 逢坂祐一郎(新極真会 第8回世界大会 2位)

子育て 3 大リスク〝溺愛〟〝干渉〟〝矛盾〟を空手の保護者に照らし合わせる、親の客観的なアドバイスのスス

 道場の趣旨に子ども達への教育的要素を深めようと、色んな情報に耳目をそば立てていますが、最近は以下の本を読んでいます。
 「高学歴親という病」

 この本のテーマになっている高学歴親は、皆、教育熱心であり、教育は勉強のみならず習い事、スポーツなどにも、とても熱心であるそうです。
 同書のタイトルにある高学歴親とは、単に自身が高学歴な親のみを指すのではなく、自身が高学歴でなくても子に高学歴を期待する人も示すそうであり、総じて教育熱心な親達を示すそうです。

 高学歴親は教育熱心さが裏目に出て、子の教育で過ちを犯すことが多く、高学歴親の失敗としては以下の 3 大リスクがあるそうです。
 1. 溺愛
 2. 干渉
 3. 矛盾

 空手の保護者には、お子さんの空手への取り組みに熱心な方が多く見られます。

 お子さんの空手に熱心な保護者は、空手をお子さんの教育の一環として位置付けている方が多く、その点においての熱心さは同書における、高学歴親に当てはまる一面もあるように思います。
 そこで空手の保護者の熱心ぶりを、上記の 3 大リスクに照らして考えてみました。

 その場合、まず〝溺愛〟は当てはまらないように思います。
 お子さんを溺愛する人は、そもそも子に空手、特に我々の空手などは習わせないと思います。
 我々の組手・スパーリング ( 自由に技を攻防させる試合、もしくは試合形式の稽古 ) は実際に、突き・蹴りを当てるものでリスクを伴うものです。
 子育てにおける溺愛の典型は、子に関わるリスクを親が全部取り除くことにあるそうです。
 子を溺愛し、子を全てのリスクから守るような親は、実際に突き・蹴りを当てて怪我をするかもしれない、怪我に及ばないにも突き・蹴りを当てられ泣いてしまうことのある、我々の空手などはリスクとみなし習わせないように思います。

 子どもにおけるリスクは時と場合によっての違いがあり一概と出来ないものですが、リスクに何にもまみえない子どもが育つことは、子どもの成長にとって危険であるとされています。
 そういった子が成人すると、社会人として一般社会に適応できなくなることが多いそうですが、溺愛は子どもの成長を阻害するものであるそうです。

 子を〝愛する〟ことと〝溺愛する〟はこととは、対照的に思います。
 先述のとおり、リスクのある我々の空手の組手・スパーリングでは、時折、泣き出す子がいます。
 スパーリングで技をもらったことが痛かったり、相手に恐怖を感じてなどで泣きますが、私の指導する道場において稽古を見学されている保護者は、子どもが泣き出しても稽古中は見守り続け、稽古が終わってからは「よく頑張ったね。」などとフォローされています。
 実際、お子さんがスパーリング中に泣き出したら、心配でたまらない方もいらっしゃると思いますが、その感情を抑えて見守り続ける胸の内には、お子さんに〝強くなって欲しい〟との思いがあるからだと思います。

 その思いは、溺愛とは対照的な親の〝愛〟であると私は思います。
 そして親の愛は、子を社会参加、また社会貢献をも担うことのできる社会人へと、成長させるものに思います。

 空手、特に我々の空手の保護者に溺愛は当てはまらないものの、しかしながら〝干渉〟〝矛盾〟については注意を払うべき点があると思います。
 空手においては〝干渉〟と〝矛盾〟は、ワンセットであるように思います。
 空手に熱心な保護者はお子さんに色々とアトバイスされますが、熱心に言い過ぎると「それだったら、お父さん ( もしくはお母さん ) がやってみて。」とお子さんに言われることがあります。

 子どもが「お父さん ( もしくはお母さん ) がやってみて。」などと言うことは、子どもの心の中に「自分 ( 親 ) は空手をしてないくせに。」と思っている証拠であり、まさしく干渉と矛盾を同時に感じているものと思います。

 私は保護者のアドバイスは的確に行えば、非常に良いものと思います。
 その的確なアドバイスとは、アドバイスを親の主観でするのでなく、客観的に行うことだと思います。
 主観的なアドバイスは「こうしろ、ああしろ」と一方的に伝えるものです。
 それに対し客観的なアドバイスは「あの選手はこうしているから、こうしたら」「先生がこう言っているから、こうしたら」などと伝えるものです。

 子どもは物事を客観的に見ることが、なかなか出来ないものです。
 親の客観的なアドバイスは、子の客観的な視点も養うものに思います。
 また主観を混えない客観的な視点は、物事の見方を深めるものであり、物事を深く捉えようとする見方は、謙虚な心、真摯な心となるものです。
 謙虚な心、真摯な心は、武道としての空手の心でもあります。
 空手における親の子への客観的なアドバイスは、ひいては子の武道の心を育むものに思います。

 親が教育熱心であることは、本来、子どもにあっては幸せなことに思います。
 しかし上記の 3 大リスクによって、誤った教育熱心に陥ってしまうと、子どもを不幸にするものです。

 空手、特に我々の空手の保護者は、先述したように教育熱心であるように思います。
 溺愛の恐れはないと思いますが、干渉と矛盾に注意を払い、空手を通してお子さんにとっての〝幸せな子育て教育〟を行って欲しいと思います。

 < ご案内、新極真会西南支部、道場生・保護者様向け、大会案内 >

 第 19 回徳島県空手道錬成大会…9/3 ㈰、美馬市うだつアリーナ、支部内締切 <7/20 ㈭ >

 第 36 回全関西空手道選手権大会…9/10 ㈰、東和薬品 RACTAB ドームメインアリーナ ( なみはやドーム )、オンライン締切日 <6/30 ㈮ >

 第 4 回日本強育空手道選手権大会…10/8 ㈰、西条市総合体育館、支部内締切 <7/25 ㈫ >
 各大会に出場希望の道場生は、指導員まで申出てください。
 6.20.2023 記