空手のススメ、徳島の田舎道場から

written by 逢坂祐一郎(新極真会 第8回世界大会 2位)

武道とスポーツの融合のススメ、融合によってもたらされる生涯武道、生涯スポーツ

 先週の居残りスパーリング。


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 空手で言う右の逆突き ( ボクシングでいうストレート ) のカウンターを意識して練り上げました。

 カウンター ( 空手的な技の名称としては先 ) は私の得意技ですが、私は左の突きでカウンターを取るパターンが多いものです。
 空手のみならず打撃系の格闘技は、相手に対し左足か右足かを前にして構えるのが一般的です。
 相手に対し左・右いずれかの足を前にして構えた場合、相手に対し自分から見た前足、後ろ足が構築されますが、前足、後ろ足に付随して前手、後ろ手 ( 奥手 ) 構築されます。

 前手の直突き ( 真っ直ぐ打つ突き ) は空手で言うところの追い突き ( ボクシングでいうジャブ )、後ろ手の直突きは逆突き ( ボクシングでいうストレート ) となります。
 前足、後ろ足が構築されると、身体は相手に対し身体の面が真っ直ぐに向く正対とはなりにくく、身体の面は斜めを向くいわゆる半身となります。
 半身の状態での前手の突き、追い突きはモーション ( 予備動作 ) が小さく打てることなどによって相手への被弾率が高まりますが、モーションが小さい分、威力が小さくなります。

 それに対し後ろ手の突き、逆突きは、打つ時に身体を捻るためモーションが大きくなり相手に読まれやすく相手への被弾率が低くなりますが、身体の捻りにより威力は高まる性質があります。

 カウンターは瞬間的なタイミングで打たなければならないため、大きなモーションでは取りづらいものです。
 私が前手の左手でカウンターを取る事が多いのは、前手の方がモーションが小さいがために被弾率が高くなる、突きの性質によるためであり、それはセオリー的なことす。
 逆に被弾率が低くなる右手の逆突きでのカウンターはセオリー的に難しいことですが、先週はその〝コツ〟をなんとなく掴んだ実感がありました。

 そのコツは空手の移動稽古で行う前屈立ちの逆突きの要点にありますが、その要点は身体の捻りを腰を回して捻るのは出なく、肩を回すもので、その肩の捻りも右の肩が前に出れば、同時に左の肩は後ろに下がるといった身体の中心を軸とした肩の回転ではありません。
 突きを打つのに最終的には右肩が前に出れば、左肩が後ろに下がる形にはありますが、右肩を前に出す時、左肩はなるべく後ろに下がるのを遅らせれるもので、丁度、身体を中心軸に沿って〝折る〟ような形で突きの動作をイメージします。
 身体を〝折る〟ことによって突きのモーションを抑える効果が生じますが、先日 SNS で見かけたある空手の動画ではこういった身体の使い方を〝身体を割る〟と言い表し、武術 ( 武道の身体技法 ) として紹介していました。

 話は変わりますが、ブログでよく書くところですが、私は武道とスポーツはその精神的本質が違うと思っています。
 武道の精神的本質は、仕事的、義務的な「すべきこと」であり、スポーツの精神的本質は「楽しむこと」だと思っています。
 その根拠は私は武道は武士道と解釈し、武士は昔の職業であったこと、スポーツは古フランス語の「desporter」「(仕事や義務でない)気晴らしをする、楽しむ」を語源とするためです。
 精神的本質が「すべきこと」である武道、それに対し「楽しむこと」であるスポーツ。
 武道、スポーツとも、一般的には同じく身体を使った運動と解釈する人が多いと思います。
 しかし私は、両者には精神的本質を根元とした違いが、運動方法としての身体の使い方にも及んでいるように思います。

 以前読んだ、ある作家の紀行分によると、著者がスペインを訪れた時に見た伝統舞踊であるフラメンコには、感慨を覚えるほどの肉体の躍動感を感じたそうです。

 そして、つくづく「西洋はボディ ( 身体 ) を楽しむ文化が根付いている」と感じたそうです。

 身体=筋肉を存分に使う躍動感に「ボディ ( 身体 ) を楽しむ文化」と感じたそうですが、語源のとおりスポーツは西洋の文化です。
 スポーツの精神的本質である「楽しむこと」は文化的に「ボディ ( 身体 ) を楽しむ」ことであり、それは身体を躍動させることなどに象徴されるもので、その身体の使い方としては筋肉が主体となるものと思います。

 それに対し武道は精神的本質が「仕事的、義務的」であるがゆえに、身体の使い方においては機能効果としての長年の持続性が求められます。

 生涯的な身体の使い方の、機能効果としての長年の持続性を考えた場合、スポーツのように筋肉を身体の使い方の主体とすれば、筋肉は加齢とともに衰えるために生涯的機能の持続性を求めることは難くしなります。
 そのため武道は、筋肉を主体としない身体の使い方を求める必要性がありました。
 そしてその必要性から生じたのが、骨格と体重移動を主体とした身体の使い方です。

 冒頭にも用いましたが、日本語では物事の要点を〝コツ〟と表しますが、それは武道のみならず生活全般の身体の使い方としての要点を、日本人は〝骨〟においてあることに由来するためです。

 戦前、戦中は別物とされていた武道とスポーツは、現代においては混同されていますが、それは身体の使い方にも及んでいます。
 混同というよりは、武道の本来の身体の使い方が、科学的と称され、そして信奉されスポーツの身体の使い方に侵食されています。
 武道においても、競技性を高めるにはスポーツの身体を使い方を取り入れることは大いに有効です。
 しかし、その有効性は競技者としての現役時代が過ぎれば、筋肉の衰えとともに薄れることが多いように思います。

 武道とスポーツは、精神的本質の違いを忘れずに、競技に取り組む場合のように融合すべき必要もあると個人的に思います。

 先週〝コツ〟を掴んだ右逆突きのカウンター、技が決まると非常に面白く、そして楽しく感じましたが、それはある意味スポーツのように「自分のボディ ( 身体 ) を楽しむ」ことであったように思います。

 武道の精神的本質を忘れずに、その精神性に沿って身体を鍛錬すれば、競技以外でもスポーツの良さを得られるように思います。

 武道とスポーツの融合は、生涯武道、生涯スポーツといった社会に必要な健康寿命の増進に繋がるものに思います。
 私は骨格と体重移動を主体とした身体の使い方で、生涯的機能の持続性をもった技を身につけ、それをスパーリングで実践し、空手を楽しみたいと思います。
 そして、その楽しみを道場生に伝えたいと思います。

 < ご案内 >
 明日 (4/29) よりゴールデンウィークですが、連休中の新極真徳島西南支部のスケジュールは以下の通りです。
 4/29 ㈯…美馬・鴨島・池田・阿南道場、休み
 4/30 ㈰…兵庫県大会及び神武杯
 5/1 ㈪…阿南道場、休み
 5/2 ㈫…徳島市加茂道場、休み
 5/3 ㈬…支部内強化稽古、鴨島道場にて型稽古 (9 時~10 時 )、組手稽古 (10 時 15 分~12 時 15 分 )、鴨島道場、通常稽古は休み 
 5/4 ㈭…美馬道場、休み
 5/5 ㈮…徳島市加茂道場、休み
 5/6 ㈯…美馬道場は通常どおり、鴨島道場は時間変更、少年部 (17 時 30 分~18 時 30 分 )、一般部 (19 時~20 時 30 分 )、居残り (20 時 45 分~21 時 30 分 )、なお鴨島道場にて演武リハーサル (15 時~17 時 )
 5/7 ㈰…四国・岡山合同稽古、新居浜市山根総合体育館にて

 4/30 ㈰の兵庫県大会には逢坂が出席、神武杯には武田指導員がサポート参加します。
 神武杯出場の道場生は、武田指導員の指示に従ってください。
 以上、関係者の皆様、よろしくお願いいたします。
 4.28.2023 記