空手のススメ、徳島の田舎道場から

written by 逢坂祐一郎(新極真会 第8回世界大会 2位)

空手の伝統価値から〝わざ〟得ることのススメ、武道は伝統価値から個人の〝わざ〟を生産するもの

 最近、下の添付画像の本を読んでいます。

 無知な私には知らない言葉が多く使われ、読むのに苦労していますが、内容が興味深く、新たな知識も得られ、とても勉強になっています。
 まだ半分くらいしか読んでいませんが、同書のタイトルでもある「わざを忘れた日本柔道」、〝わざ〟の喪失の要因は、柔道のスポーツ化にあり、柔道のスポーツ化を様々な視点から考察することが、同書の意図の一つと伺えます。
 最近、野球の大谷選手の契約金が話題になりましたが、現代スポーツは莫大なお金が動く商品スポーツの消費価値に立脚し、消費価値をスポーツそのものの存在意義として、その意義を高めているそうです。

 オリンピック競技である柔道も商品スポーツの消費価値の高まりに乗じ、グローバルスポーツの地位を確立しているそうですが、私は以前からブログで述べていますが、スポーツの精神的本質は〝楽しむ〟ことであると認識しています。
 スポーツをする者、またスポーツを見る者も、ひとまとめにしたスポーツを楽しむことから派生するその娯楽性、そして娯楽性から派生するスポーツの消費価値の高まりは現代社会にあっては必然であり、かつ精神的、経済的に社会を潤す要因として私はとても良いことだと思います。

 ところで私は「武道はスポーツと違う」といった考えを有します。

 そのような考えは私のみでなく、武道に携わる多くの人たちの共通意識でもあります。
 「武道はスポーツと違う」といった考え方を持つ人たちは、本来、武道として定義される現代柔道のように武道のスポーツ化には違和感を感じます。
 一例として、柔道の試合にカラー柔道着が採用された時には「武道性を損なう」といった否定的な意見が多かったそうです。
 同書も「柔道は武道であり、柔道のスポーツ化は良しとしない」スタンスであるように思いますが、柔道のスポーツ化の考察においては武道とスポーツの違いに言及しています。
 そしてその違いを現代スポーツが消費価値に立脚しているのに対し、武道は道徳修養のための〝礼〟に見られる伝統的価値に立脚するものとして武道の伝統価値を考察し、スポーツの消費価値の対抗軸として武道の伝統価値を据えることで、伝統価値から生じる武道の〝わざ〟によって示される武道の存在意義の見直しを同書では計っているように伺えます。

 私も武道関係者として武道とスポーツの違いに瑣末な私見を持ちますが、その違いを立証するのに武道の伝統価値もさりながら、スポーツの〝消費〟価値に対するもっと鮮明的な対抗軸として、〝生産〟価値を武道の存在意義の立脚点として定めることも有効のように思います。

 私見として、武道とスポーツの違いは精神性にあると思います。
 以下は以前のブログで書いた、武道とスポーツの精神性の違いに関した内容です。

 スポーツの精神性は、その語源の由来にあると私は思いますが、スポーツの語源はネットで調べると以下の通りです。
 「sports スポーツ」の語源はラテン語の「deportare デポルターレ」にさかのぼるとされ、「ある物を別の場所に運び去る」が転じて「憂いを持ち去る」という意味、あるいは portare「荷を担う」の否定形「荷を担わない、働かない」という意味の語である。
 これが古フランス語の「desporter」「(仕事や義務でない)気晴らしをする、楽しむ」となり、英語の「sport」になったと考えられている。
 上記の語源から、スポーツの精神的本質は〝楽しむ〟ことにあると思います。

 一方、武道の精神的本質。

 私は常々ブログで書くように、武道は武士道と思っています。
 武士道は「弱いものいじめをしない」などといった、武士の美意識です、
 武士道としての武道は、武士が昔の人の職業でもあったゆえに、スポーツの由来が「仕事や義務でない、気晴らし」であることに対義的な仕事的、義務的な〝すべきこと〟が精神的本質に思います。
 私見である武道の精神的本質〝すべきこと〟また、武道が昔の職業であった武士の武士道であることも相まって、私は武道の精神的本質〝すべきこと〟には生産性が含まれると思います、
 そして武道の生産価値こそが、武道の存在意義の一翼を担うものと思います。

 武道が生み出す多くは「正々堂々」などの個人の品格を高める美意識ですが、美意識は形而上的、抽象的であり、物質的な質感が薄いものです。

 物質的な質感が薄いため、武道の生産性は具体性に乏しい一面がありますが、美意識以外に武道の生産性を明瞭にする事象が武道にはあります。
 私が思うに、それは同書でいう武道としての〝わざ〟であり、空手あれば〝わざ〟に伴う〝組手の利〟です。

 空手の組手は、肉体と肉体とが物質的にぶつかる質感を伴なうものです。
 私が思う〝組手の利〟とは〝組手に勝つこと〟〝組手で負けないこと〟ですが、組手の勝ち負けは可視化できるゆえに明瞭あり、その勝ち負けの要因に目を凝らすと〝わざ〟という質感が見えてきます。

 組手の本質の一つとしての肉体と肉体のぶつかり合いは、単純的な物理法則に従えば身体の大きさ、若さなどのフィジカル的条件が有利、不利を左右します。
 しかし〝わざ〟は武道、空手においてはフィジカル的条件を凌駕するものであり、〝わざ〟そのものが有利、不利の要因となります。
〝わざ〟そのものが空手の組手の有利、不利の要因となり〝わざ〟が有るゆえに勝ちとなり、〝わざ〟が無いゆえに負けとなるために、 勝ちはもちろんのこと、負けないことにも〝わざ〟は存在し、そして負けないことにも〝組手の利〟は存在すると思います。

 空手の組手のように武道の〝わざ〟が生産する利には現物的なお金のような利は伴わず、ただの事象としての組手の勝ちのような、個人の精神的な満足としての利に過ぎません。
 しかし、その満足は娯楽で得られる満足と、個人の精神に充足をもたらす点においては同質に思います。
 スポーツは消費で満足で得て、武道は生産で満足を得る、両者とも個人の満足に帰結する点で同質ですが、満足を生み出す消費と生産の違いはあると思います。
 そしてその違いは、資源浪費による環境問題などの消費文化の過熱に影がちらつく現代にあっては、重要な違いのように私は思います。

 伝統のある阿波おどり徳島県の観光資源になっているように、現代社会にあっては伝統価値は消費にさらされ、そして消費されます。

 消費は消費者の嗜好に左右されるものですが、伝統価値がただその伝統の存在のみに存在意義を示すだけであれば、嗜好は変遷するものであるゆえ、いずれは消費しつくされるように思います。

 伝統価値は消費嗜好の変遷に消耗されない永続的な生産性をもたなければ、真の伝統とはなり得ないと思います。
 「わざを忘れた日本柔道」同書をまだ読み終えておらず、同書の結論にはたどり着いてはいませんが、武道は〝わざ〟を永続的に生産することで存在意義の一つを示せれると思います。

 武道の〝わざ〟は武道の美意識のような形而上的、抽象的なものでなく、空手の〝組手の利〟のような形而下的、具体的な事象であり、それは武道の美意識のような伝統価値に基づく稽古によって生産され、武道を学ぶ個人が得るものです。
 そして武道によって生産された個人の〝わざ〟は、〝わざ〟を得た個人によって品質保持、または品質のさらなる向上への個人の努力がなければ、武道の〝わざ〟は現代にあってはスポーツの存在意義などによって消費され、消え去るもののように思います。


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 しかし〝わざ〟を得た個人の永続的な〝わざ〟の品質保持、さらなる品質向上の努力としての〝稽古〟があれば、武道が一面的にスポーツ化されたとしても、武道の伝統価値から生成される〝わざ〟は忘れられないと思います。

 〝わざ〟に対する捉え方が、武道としてのあり方を左右するとも思いますが、私は空手の伝統価値から組手の利として得た自身の〝わざ〟の品質を保ち、向上させることを武道としてのあり方としたいと思います。

 そして〝わざ〟の生産、その品質保持、向上に空手の武道としての伝統価値=美意識が伴なうことを、道場生に〝わざ〟を指導することで伝えていきたいと思います。

 < ご案内 >【新極真会徳島西南支部、道場生・保護者様対象】
 4/21 ㈰に高知市で開催される第 41 回全四国空手道選手権大会の申込書の配布準備ができております。
 出場希望の道場生は指導員まで申出てください。
 支部内締切…3/6 ㈬

 2/12 ㈪ < 祝日 > の第 3 回香川県空手道選手権大会に出場される道場生は以下のスケジュールでに従ってください。

 錬成・組手部門出場者は 8 時 10 分の開場より 8 時 45 分まで会場アリーナ内でアップを行います。
 入場後、速やかに受付を済まし集合してください。

 型部門出場者は 11 時 30 分頃 ( 錬成・組手部門が終了次第 ) から試合開始です。
 型のアップは各自で行い、各自の責任で競技開始に遅れないように注意してください。

 なお型の競技中に県大会・組手部門出場者で、重量級以外の選手は計量が義務付けられています。
 計量も各自の責任でお願い致します。

 13 時 45 分の開会式後に行われる県大会・組手部門の出場者のアップは、12 時 45 分にサブアリーナで行います。
 型部門に出場中の道場生はアップに参加できない場合もあると思いますが、その場合は各自でお願い致します。
 指導員も型競技の審判のためアップ指示を行えない場合があります。
 その場合は桒島初段の指示に従ってください。

 またアップに使うミットの持込み協力を保護者の皆様にお願いしたいと思います。
 アップのミットは 2/10 ㈯の稽古で鴨島道場のミットをお渡しします。
 2/10 ㈯の鴨島道場の稽古参加者で、ご協力願える保護者の皆様はよろしくお願い致します。

 香川県大会にともない以下の道場は稽古時間の時間変更、休みとなります。
 鴨島道場…2/10 ㈯・時間変更 < 少年部 17 時 30 分~18 時 30 分 > < 一般部 19 時~20 時 15 分 > < 居残り稽古 20 時 30 分~21 時 30 分 > ※選手クラスは休み

 阿南道場…2/12 ㈪ < 休み >

 徳島市加茂道場…2/12 ㈫ < 休み >

 以上、よろしくお願い致します。

 2.6.2024 記