空手のススメ、徳島の田舎道場から

written by 逢坂祐一郎(新極真会 第8回世界大会 2位)

親の子どもへの信頼のススメ、子どもが自分で自分を信頼する〝子ども自身の信頼〟を〝親の子どもへの信頼〟に

 一昨日の日曜日 (7/2) は岡山市で全中国錬成大会でした。
 大会を主催された井上師範、石原師範、岡山市北道場、岡山東支部のスタッフの皆様、素晴らしい大会に参加させていただきありがとうございました。

 新極真会徳島西南支部からは 21 名がエントリー。
 団体型でイマリちゃん、アヤネちゃん、ミオちゃんのチームが 2 位。
 個人型でアヤネちゃんが優勝、イッシン君、ミオちゃん、ハナちゃん、カイト君が 2 位。
 組手でイロハちゃん、ソラト君が優勝、ミオちゃんが 2 位、イッシン君、アヤネちゃん、イマリちゃん、ミツキちゃん、ユウジ君が 3 位。
 敢闘賞にエイタ君の受賞でした。


 さて我々の空手の組手、スパーリング ( 自由に技を攻防させる試合、もしくは試合形式の稽古 ) は、防具をつけて行います。
 子ども達は頭部を防護するヘッドガードを装着しますが、頭部全体を覆うために組手、スパーリングで顔全体の表情は見えにくいものです。
 しかし視界確保のヘッドガードの構造上、目の表情は近づけばよく見えます。
 我々の空手の組手、スパーリングは突き蹴りの技を実際に当てるため、目だけの表情であっても、そこに表れる子ども達の心理状態がよく伺えます。

 我々の空手の組手、スパーリングでは、実際に突き蹴りを当てることから生じる〝痛み〟〝怖さ〟に対する「怯え ( おびえ )」や「怯み ( ひるみ )」の感情を子ども達はよく露わにします。
 しかし痛みや怖さに対しても怯むことなく、目に心の強さを感じさせる輝き放ちながら組手、スパーリングに取り組む子ども達もいます。
 そういった目の輝きを放つ子ども達には、ある種の「覚悟」を感じます。
 実際に当てにくる突き蹴りを全て防御できれば、痛みや怖さを感じるものではありません。
 しかし虚実が交差する自由攻防の組手、スパーリングにおいて相手の技を全て防御することは不可能です。
 防御に意識を高めても、何発かは被弾する覚悟が必要ですが、組手、スパーリングに覚悟を感じさせる子ども達の覚悟とは、相手の技を被弾する覚悟、リスクに敢えて身をさらして勝利を目指す覚悟のように思います。

 その覚悟を彼らは空手を始めた最初から、持ち合わせていた訳ではありません。
 我々の空手では組手、スパーリングを始めた当初は、「怯え」「怯み」の表情を目に浮かべる子ども達がほとんどです。

 「怯え」「怯み」の表情は稽古を続けていくうちに、いつしか「覚悟」の表情に変わりますが、その要因を自らの経験にも照らし合わせて考えるに、組手、スパーリングで得る経験の作用が大きく反映しているように思います。
 実際に突き蹴りを打たれて痛い思いをしても、そのダメージは回復するものであり、ダメージが回復することの経験の積み重ねは、痛みへの耐性となります。
 また強い相手との対戦は気持ちが圧迫される大きなプレッシャーとなるものですが、最初はそのプレッシャーに飲まれて一方的に何にも出来ない、打ちのめされる敗勢に追い込まてもプレッシャーには慣れるものです。
 プレッシャーに慣れれば敗勢を挽回できるようになり、さらに経験を重ね慣れれば、プレッシャーに拮抗し攻勢に転じることができます。
 「怯え」「怯み」を「覚悟」に変える〝経験〟は、〝痛みへの耐性〟〝プレッシャーへの慣れ〟のように思います。

 〝痛みへの耐性〟〝プレッシャーへの慣れ〟をもたらす経験は、ダメージを受けても回復すること、最初は飲まれていたプレッシャーへの挽回や拮抗など、自分の身体で感じる経験ですが、その経験は自分の身体は「痛みに耐えられる」「プレッシャーを跳ね返すことが出来る」などの〝自分への信頼〟をもたらすものに思います。

 組手、スパーリングでの子ども達の「覚悟」には、経験による〝自分への信頼〟が土台としてあるように思います。

 先ごろ読んだ本によると子育ては、子どもへの〝心配〟を〝信頼〟に変える旅であるそうです。
 赤ちゃんとして、親の手がなければ命を保つことの出来ない状態で生まれてくる子ども達、小さな赤ちゃんは心配の塊といって良い存在です。
 子どもへの心配は子どもが成長するにつれ薄れていくものですが、元々が心配の塊であるがゆえに、心配は子育てにおいて長く付きまといます。

 親が誤った心配をしてしまえば以前のブログでも書きましたが、以下の子育て 3 大リスクをもたらすそうです。
 1. 溺愛 2. 干渉 3. 矛盾
 心配が引き起こす溺愛は子どもから全てのリスクを取り除こうとし、干渉は子どもが間違えないように何でも逐一口出し、矛盾は子どもが少しでも良い学校、良い職場に身を置けるように親が出来なかったことの押し付けになったりするそうです。
 それら 3 大リスクにおける子どもへの心配は、裏を返せば子どもへの信頼の欠如となるそうです。
 子育てにおいて必然的に発生する子どもへの心配ですが、それを信頼に変えることが子育てにとって最も大切なことであるそうです。

 〝親の子どもへの心配を信頼に変える〟

 その手段としては先述したように空手における覚悟の土台となる、子ども自身が自分を信頼する〝子ども自身の信頼〟を培う経験を与えることが、有効な手段の一つであるように思います。

 昨年 9 月、ポーランドで行われた第 7 回全世界ウエイト制大会、私の息子は幸運に恵まれ出場することが出来ました。
 幸運ゆえの出場だったため、当人には「自分なんかが出場しても良いのか ?」といった葛藤もありました。
 葛藤から世界大会にネガティブになったりしましたが「幸運を享受しろ」と、私は叱咤しました。
 私の叱咤に対する息子の反応は、言葉で聞かずとも息子の世界大会までの稽古姿勢で感じましたが、試合当日、初戦に向かう息子の背中には息子の覚悟を感じました。

 世界大会の結果は 2 回戦敗退に終わりましたが、試合内容はこれまでの試合の中で一番良かったと思います。
 第 7 回全世界ウエイト制大会においての息子の覚悟を親として感じた時「これくらい空手の試合で覚悟をもってのぞむことが出来るのであれば、社会に出ても自分の責任を果たせれる社会人になるんじゃないかな。」と思いました。
 それは親としての、子どもへの信頼であったように思います。

 第 7 回全世界ウエイト制大会における息子の戦いぶりには、大会に向けての覚悟が反映したように思います。
 その覚悟は〝開き直り〟や〝捨て身〟だったかもしれませんが、それらを生み出したのは息子の覚悟を持った稽古から生じた〝自分への信頼〟だったと思います。

 私は、子どもが自分自身で持つ〝子ども自身の信頼〟は、〝親の子どもへの信頼〟となるものと思います。
 一昨日の全中国錬成大会、出場した道場生の皆んなは〝自分への信頼〟または、それを得ることに繋がる一つの経験を積んだと思います。

 空手で培う〝自分への信頼〟は、空手で感じる「怯え」「怯み」に対する覚悟を積み重ねることで生じます。
 稽古より「怯え」「怯み」が顕著な試合は、覚悟を高める絶好の機会となります。
 皆んな、良く頑張りました !!
 試合は続きます。
 また頑張りましょう !!

 保護者の皆様もお疲れ様でした。
 保護者の皆様におかれましては心配も多々あると思いますが、一戦一戦のお子さんの試合を見守り、空手がお子さんへの信頼を高める、子育ての一環であって欲しいと思います。

 < ご案内、新極真会西南支部、道場生・保護者様向け >
 7/9 ㈰の四国・岡山合同稽古ですが、一反、西条市総合体育館に変更になりましたが、再度、従来案内していた新居浜市山根体育館に変更となりました。
 西条市総合体育館への変更はSNSでも拡散されましたので、参加される皆さんはご注意ください。

 現在、以下の大会の申込みを支部内で募集しています。
 第 19 回徳島県空手道錬成大会…9/3 ㈰開催 美馬市うだつアリーナ 支部内締切 <7/20 ㈭ >

 全中国空手道選手権大会…9/24 ㈰開催 

 第 4 回日本強育空手道選手権大会…10/8 ㈰開催 愛媛県西条市総合体育館 支部内締切 <7/25 ㈫ >

 第 19 回愛知県空手道選手権大会…10/9( 月・祝 ) 開催 愛知武道館 支部内締切 <7/25 ㈫ >

 参加する道場生は指導員まで申出てください。

 7.4.2023 記