空手のススメ、徳島の田舎道場から

written by 逢坂祐一郎(新極真会 第8回世界大会 2位)

〝これからの自分が、これまでの自分を決める〟生き方のススメ、これまでの自分が冴えなかったとしても…

 最近の自主練習で取り組んでいる〝空蹴り〟。


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 空蹴りの練習効果に改めて感じ入るところがあり、精力的に取り組んでいます。
 個人的に感じる空蹴りの練習効果は、蹴り技そのものの習得のみならず、身体全体の動作に及ぶように思います。
 例えばそれは突き、防御としてのステップなど、いわば身体全体の身のこなしに及び、身体全体の身のこなしを高めるように思います。

 空手の蹴り技は蹴った足を接地させる際に、足音をさせないことが要諦となります。
 足音をさせずに蹴り足を接地させるには、「バタッ」といった感じに足の裏全体を一度に接地させるのではなく、つま先から踵にかけて順次に接地させる感覚が必要です。
 蹴り足の接地は瞬時の動作ですが、足音をさせないように、それを細かく行うことは瞬時の動作の細分化となります。

 足音をさせない蹴り足の接地における足の裏の動作を細分化する感覚は、身体全体の動作を細分化する感覚に繋がり、足の裏と同様に瞬時の身体全体の動作の細分化は、動きと動きが滑らかに連動するスムーズな身体全体の動作となるように個人的に思います。
 また動作の細分化、スムーズ化には自然と重心移動が伴うものですが、足の裏の動作の細分化にも重心移動が伴い、足の裏の重心移動は体全体のスムーズな動きを生み出す起点になるように思います。

 蹴りは骨盤を動かすことも要諦ですが、骨盤を動かすと骨盤まわりにある〝腸腰筋〟という筋肉が動きます。
 〝腸腰筋〟は体幹を構成する筋肉の中でも、上半身と下半身を繋ぐ唯一の筋肉として重要な筋肉とされています。

 蹴りによって〝腸腰筋〟を動かし鍛えることは、体幹の関係からも身体全体の動きに関係するものです。

 また蹴りは当たり前のことですが、片足の動作であり、バランスが要求される動作です。
 蹴りそのものが片足トレーニングである一面がありますが、片足トレーニングとしての蹴り技の練習は、身体全体のバランスを高める効果があります。
 上記に示したように、蹴り技の身体全体の動作に及ぶ練習効果は多岐に及ぶものであり、蹴り技の練習はとても奥深いように個人的に思います。

 我々の空手は、蹴り技の練習を重視します。
 我々の空手が独自に編み出した蹴り技、練習方法もたくさんあります。
 我々の空手とは違う昔の空手は、型での蹴り技が少ないことから思うに、蹴り技の練習効果をあまり重視していないように個人的に思います。
 競技化の進展などの要因があったと思いますが、蹴り技の練習が身体全体の動作を高めることに気づき、空手の蹴り技を増やし、その練習方法をたくさん編み出したことは、我々の空手には開明性があったように思います。

 蹴り技の重視は我々の空手の真髄の一つと思いますが、近年の私は自身の練習では蹴り技から遠ざかる傾向がありました。
 その理由は「加齢により身体が硬くなり、足も高く上がらなくなり、膝が痛くて昔のような蹴りがスパーリングで出来ないから、蹴りはもういいか」などと思っていたからです。
 近年の私は蹴りも少しは使いますが、突きを主体にする組手スタイルに切り替えました。


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 突きを主体とする組手においても、足の動きはステップ等で必要となります。
 ステップの練習などで足を鍛えていましたが、何か違和感を感じ「昔のような蹴り技を使うためでなく、足を鍛えるために従来やっていた蹴り技の練習を再開しよう。」と思い立ち続けてみたところ、今の突き主体のスタイルの調子が良くなったように感じます。
 また蹴り技の練習とともに、これも「これから加齢を重ねて身体は硬くなる一方だから…」と遠ざかっていた開脚ストレッチも再開したところ、悪化していた古傷の膝の具合が改善しました。

 若い時の昔からやってきた練習は加齢ともに出来なくなることや、しない方が良いこともありますが、その根幹は変えてはいけないように思います。
 特に我々の空手はその練習の根幹に、我々の空手の真髄と開明性があるために特にそう思います。

 さて話は変わりますが、以前読んだ本の中で著者が偶然見かけたとする以下の言葉に、著者が深く感銘を受けたことが書かれていました。
 〝これからの自分が、これまでの自分を決める〟
 私も深く感銘を受けた言葉ですが、普通、この言葉と逆の〝これまでの自分が、これからの自分を決める〟といったことが、積み重ねの大切さを説く言葉として通りが良いと思います。

 そのため〝これまで〟〝これから〟の分岐点である〝今〟の頑張りを諭す言葉としても、多くの人に受け止められやすいと思います。
 対して〝これから〟〝これまで〟を決めるとは、その普通の発想とは逆であり、一見不可解に取られやすいと思います。
 しかも、よくよく思うに普通の発想である〝これまで〟〝これから〟を決めるとは、〝これまで〟より〝これから〟が長い、若い人には受け入れられると思いますが、〝これから〟〝これまで〟より短い、先々週に 51 歳を迎えた私のような人たちには受け入れにくい一面もあるように思います。
 特に〝これまで〟が冴えなかったように自分で感じる人には、受け入れにくい言葉のように思います。

 私は空手の選手としては、頂点に立つことなく選手を終えました。
 選手としてある意味、冴えなかったように自身感じることもあります。

 しかし選手としては、沢山のことを学びました。
 蹴り技の練習が身体全体の動きを高める効果があることも、選手として積んできた練習での経験から気づくことが多いものです。
 選手として積んだ経験を加齢を重ねて衰えていく〝これから〟の自分のスパーリングに活かすこと、そして自分が指導する〝これから〟の選手に伝えていくことは、選手として冴えなく終わったこれまでであっても、これまでやってきたことの意義を深める〝これからの自分が、これまでの自分を決める〟ことに叶う生き方に思います。

 人の〝これまで〟には、何かしらの意義があると思います。
 たとえ冴えなかった〝これまで〟であっても、そこに意義はあり、その意義から〝これから〟が見出せれるものと思います。

 私の〝これまで〟の意義の一つは、蹴り技の練習を積んできたことにありました。
 自主練習における蹴り技の練習、〝これから〟は遠ざかることなく、続けて行きたいと思います。

 < ご案内、新極真会西南支部、道場生・保護者様向け >
 以下の大会の支部内締切日は今週の木曜日 (7/20) となっています。
 第 19 回徳島県空手道錬成大会…9/3 ㈰開催 美馬市うだつアリーナ
 第 40 回全中国空手道選手権大会…9/24 ㈰開催 広島県立総合体育館小アリーナ
 出場する道場生の皆さんは、お忘れなきようにお願い致します。

 また、今週の金曜日 (7/21) から来週の月曜日 (7/24) まで、東京で開催されるカラテドリームフェスティバル関連の出張のため、以下の道場はお休みとなります。
 7/21 ㈮…徳島市加茂道場
 7/22 ㈯…美馬道場・鴨島道場
 7/24 ㈪…阿南道場
 7/25 ㈫…徳島市加茂道場
 道場生、保護者の皆様、よろしくお願い致します。
 新極真会徳島西南支部からカラテドリームフェスティバル 2023 全国大会に出場する、ミツキちゃん、ハナちゃん、アスマ君、タイシン君、タイセイ君、トキ君、カイト君、頑張れ !!

 7.18.2023 記