空手のススメ、徳島の田舎道場から

written by 逢坂祐一郎(新極真会 第8回世界大会 2位)

自分の存在を実感することのススメ、スパーリングでの自分の技から感じる自分の存在感

 先週の私が指導するいくつかのクラスでは、下の添付動画ミット稽古を行いました。
 前蹴りと膝蹴り、そして突きのコンビネーション。


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 足の裏の中足で蹴る前蹴り、膝で蹴る膝蹴りは技のリーチが違いますが、それを組合わせることで相手との前後の間合いに変化を持たせるコンビーネーションとなります。
 前後の間合いの変化を特徴とするコンビーネーションの習得、そして同時に前後の間合いをコントロールする足捌きを習得することを主眼にしたミット稽古です。
 前後の間合いをコントロールする足捌きが出来なければ難しい稽古ですが、道場生にはしっかりとした足捌きを練り、それによって目まぐるしく変わる間合いの変化に応じられる、柔軟な対応力を持つ組手の構築を目指して欲しいと思います。

 さて先ごろ、久しぶりに稽古に参加する道場生達がいました。
 私の指導するクラスでは必ずスパーリングを行いますが、彼女達にとっては当然、スパーリングも何ヶ月、何年ぶりかのスパーリングとなりました。


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 「スパーリングのブランクは如実に動きに現れる」などと言われますが、彼女らの動きを見ていると、さほどにブランクは感じられませんでした。
 私が指導するスパーリングはいわゆる〝ライトスパーリング〟であり、ハードなヒッティングはせずに、軽く当てる突き蹴りの応酬で組手の反応力を高めることをスパーリングの主たる目的に設定しています。
 ブランクが感じられなかったのは彼女たちの反応力に対してですが、試合のようなハードなヒッティングをする〝ガチンコスパーリング〟では、彼女たちも稽古の空白によって生じたスタミナやパワーなどの低下でブランクは如実に現れたと思います。

 組手、スパーリングはパワー、スタミナ、反応力などの身体条件が、その内容を左右するものです。

 パワーやスタミナなどはブランクがすぐに組手、スパーリングの内容に反映をするものですが、反応力のブランクによる影響はパワー、スタミナなどに比べては、すぐに影響するものでないように以前から個人的に思っていましたが、彼女たちのスパーリングを見て改めて思いました。

 反応力へのブランクの影響が遅いことは、彼女達に限ったことではありません。
 幼稚園、小学校低学年で入会し、中学、高校で稽古に空白が生じた道場生が久しぶりに稽古に参加することは時折あることですが、彼らの久しぶりのスパーリングからも一様に反応力へのブランクはさほどに感じません。

 久しぶりのスパーリングでブランクを感じさせない道場生の共通点は、小さい頃から小学生の期間など長年継続的に稽古に来ていたことです。
 その共通点は、身体が大きくなる成長期に空手の稽古を欠かさなかったことですが、成長期は子どもの将来を見据え、意図的な身体づくりをすべき期間です。
 スパーリングでブランクを感じさせない反応力は、成長期の身体づくりの時期に生成された彼女、彼らの身体機能の一部であり、対人感覚でもある組手、スパーリングの反応力は、身体を動かす身体機能のみでなく彼女、彼らの身体づくりに伴って培われたマインド的なスキルにも思います。

 スパーリングでの反応力は、突き、蹴り、防御といった技となります。
 空手の組手、スパーリングは自分の手足、身体そのものが〝技〟となり、自分の身体が〝技〟として表出されるものです。

 〝技〟としての自分の身体の表出は、自分の存在そのものの表出であり、それは自分の存在の実感、実証であると思います。
 現代社会はなんでも頭で考える〝脳化社会〟であり、「脳化社会は自分の身体を忘れさせてしまう」と述べる学者さんがおられます。
 その論には「なるほど」と私も思うところですが、「自分の身体を忘れてしまう」ということは「自分の存在を忘れてしまう」ということでもあるように思います。

 牛丼店のサービスの紅生姜を直箸でかっ込む様子など、類似の動画を「面白い」と思ってでしょうが、SNS に投稿するような若者が後を絶たないようです。
 彼らの行動には「そんなことをすると、どうなるか ?」といった認知能力の無さを感じますが、それと同時に「そんなことをすると、自分がどうなるか ?」といった〝自分の存在への実感〟の無さも感じます。
 彼らは自分の存在に実感を持っていないように、そういった愚かな行動を SNS やニュースで目にするたびに思いますが、それはとても不幸なことにも思います。

 情報化が進み〝脳化社会〟とも評される現代社会では〝自分の存在〟を認知する手段が、乏しくなっているように思います。

 空手、特に実際に突き蹴りを当てる我々の空手の組手、スパーリングは、自分の存在を実感、そして実証できる最良の手段の一つに思います。

 道場生には〝自分の身体の一部としての技を身につけ〟組手、スパーリングで表出される技によって自分の存在を実感、実証して欲しいと思います。
 そして実感、実証できる自分の確かな存在を社会に適応させ、それぞれの思い描く、脳内だけでない、現実の幸福な未来を実現して欲しいと思います。

 < ご案内 >【新極真会徳島西南支部、道場生・保護者様対象】
 4/21 ㈰に高知市で開催される、第 41 回全四国空手道選手権大会の申込みの支部内締切は明日 3/6 ㈬までとなっています。
 出場予定の道場生の皆さんは、お忘れなきようにお願い致します。

 また以下の道場稽古はお休みとなります。
 ご確認ください。
 鴨島道場…3/9 ㈯・3/16 ㈯
 美馬道場…3/9 ㈯・3/14 ㈭・3/16 ㈯
 阿南道場…3/11 ㈰

 3.5.2024 記